ネイチャースポーツの不振と子供の理科離れ

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ネイチャースポーツの不振と子供の理科離れ
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「日本での船の販売は良くないですね。クルーザーの売れ行きは近年、右肩下がり。ヨットに至っては、ファンが年を取ってヨットをやめる分だけユーザーが純減するという感じです。若年層は全くと言っていいほど海の世界に入ってきません」

静岡県にある大手マリーナの所長のこの言葉どおり、日本のマリンリゾートは今、困難な状況に直面している。ホンダは今年、新型の60馬力級船外機「BF60」、および大型船外機「BF225/200/175」のビッグマイナーモデルを発売したが、国内と海外の販売計画を見るとBF60は国内=250台、海外=5350台、BF225/200/175に至っては海外が3450台に対して国内向けはわずか50台にすぎない。

日本でマリンスポーツが流行らない基本的な背景は、バブル崩壊以降、日本全体がインドア志向になってしまったことだ。バブル期にマリーナ代が高騰したことで、船は高いというイメージが染みついてしまい、船遊びが、釣りファンを含む一部ユーザー以外にとっては全く一般的でなくなってしまったことも大きい。

また、漁業関係者との沿岸利権をめぐる確執も根深い。クルーザーが海上で漁船に嫌がらせを受けることは日常茶飯事なうえ、「うっかり定置網でも切ろうモノならとんでもない保証金を吹っかけられることも珍しくない」(前出の大手マリーナ所長)。

このような状況では、船を使ったマリンスポーツなど一般的になろうはずがない。「そもそも、船に乗ろうという考え自体、ほとんど出てこない時代です。もう教育しかないと思いますよ。野山や海に子供を出し、自然に親しませるといったことをやっていかない限り、マリンに人が戻ってくることはないと思います。ネイチャースポーツの不振と子供の理科離れは、問題の根が同じであるような気がします」(クルーザー操縦インストラクター)。

現在、この状況を打開しようと、ヤマハ、ホンダ、スズキなど、複数のマリン関係の企業が協力して、マリンスポーツ体験の場を増やしたり教育に協力したりといったプロジェクトを立案中だという。「こういう試みは一企業がやってもうまくいかない。苦境に立たされているときには、やはり海を愛する人や企業が協力し合って事を進めるべきなんです」(業界関係者)。

実は、マリンスポーツの敷居は以前に比べて低くなっている。2003年のプレジャーボート向けの免許制度改正で、以前は制限が厳しかった遠洋にも簡単に出られるようになった。免許自体も自動車免許とは比較にならないくらい短時間で取得できる。ボートスクールの費用も法定費用まで含めて数万円と、低価格なところが多い。

最近は低価格で一日遊べるレンタルクルーザーがかなりの勢いで増えており、数人で割り勘にすることを考えれば、すでにマリンスポーツは高嶺の花ではない。興味のある向きは、この夏に免許取得を考えてみてはいかがだろうか。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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