「より多くのカスタマーが見込めるマーケットへ」と、サイズを含むデザイン創りの軸足を太平洋の向こう側へと移したくなる気持ちは分かる。「クルマ好きばかりを相手にしていたのでは、これ以上の生産台数拡大は望めない」という考え方も、トヨタやホンダ、日産といった“大手”に比べれば遥かに規模が小さいという富士重工業ならではの特殊性から来る脅迫観念がもたらしたものかも知れない。
けれども、そうした特徴的キャラクターを一掃するかのような新型の仕上がりに、多くの“スバリスト”が「自分が望んでいた『レガシィ』とはちょっと違うかナ」と感じるのは、スバルの商品というのがこれまでは「そうした固有のキャラクターこそを自らブランドのDNAとしてアピールしてきたから」でもあるはずだ。
「開発当初は微低速の動きのスムーズさに難点があった」と、結局DCTからCVTへとスイッチされたというトランスミッションも、“スバルらしさ”をアピールするならばDCTで貫いて欲しかったとぼくは思う。「日本で使うには過大な車幅はネガが大きい」とあれだけ宣伝をして来たならば、1.8mに迫る全幅や5.5mという最小回転半径値には、やはり「どうして?」の思いも消え去らない。
確かに、新しいレガシィに乗ってみるとどのモデルもとても良く出来ているし、これまでの各モデルが違わず売り物として来た味わい深い走りのポテンシャルを実感させてもくれる。が、端的に言ってすでにボディサイズの点から、歴代レガシィとしては初めて自らの「購入興味のリスト」からは外れてしまったのが残念だ。
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★
河村康彦|モータージャーナリスト
1985年よりフリーランス活動を開始。自動車専門誌を中心に健筆を振るっているモータージャーナリスト。ワールド・カーオブザイヤー選考委員、インターナショナル・エンジンオブザイヤー選考委員。