最初に写真で見たときは「なんじゃこりゃ」と思った。
でも実車を前にしたらこのデザインが理解できた。『XF』で確立したモダンジャガーのフォーマットに、フラッグシップらしい優雅さをプラスすれば、長く伸びた6ライトウインドーや縦長テールランプ、クロームで彩られたオーセンティックなインテリアという新型『XJ』のディテールになるのは当然の帰結だろう。
押し出しに頼らず個性を表現するという英国流を貫いた造形をまず賞賛したい。
そして走り出せば、これはまごうかたなきジャガーである。しっとり感は控えめになり、フラットライドが主体となったが、段差や継ぎ目をひたひたと、生き物のようにいなす感触は健在。ステアリングは握りこそ太くなったものの、繊細な操舵感はそのままだ。
サイズを忘れさせる軽快な身のこなしは、アルミボディのおかげというより、英国製スポーツサルーンの伝統を継承した結果だろう。クルージングでは厳かな5リットルV8は、フルスロットルでは唸りを上げるが、その響きに品を感じる点もドイツのライバルと違う。
大きさや速さを誇示しないアンダーステートメントの伝統は今も生きている。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
森口将之|モータージャーナリスト
試乗会以外でヨーロッパに足を運ぶことも多く、自動車以外を含めた欧州の交通事情にも精通している。雑誌、インターネット、ラジオなどさまざまなメディアで活動中。著書に『クルマ社会のリ・デザイン』(共著)、『パリ流 環境社会への挑戦』など。