【IRL 最終戦】最後の最後までタイトル争い

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表彰台。1位(中央)カストロネベス、2位(向かって左)フランキッティ、3位(同右)パワー
表彰台。1位(中央)カストロネベス、2位(向かって左)フランキッティ、3位(同右)パワー 全 10 枚 拡大写真

2日、IZODインディカー・シリーズの今季最終戦が行われた。最終戦までもつれこんだシリーズタイトルをめぐる決戦の舞台は、フロリダ州のホームステッド・マイアミ・スピードウェイ。全長1.5マイルの高速テクニカル・オーバルに27台のインディカーが集結した。

注目のシリーズ・チャンピオンに名乗りをあげているのは、先に今季のロードコース・チャンピオンタイトル「マリオ・アンドレッティ・トロフィ」を獲得しているウィル・パワー(チーム・ペンスキー)と、今年のインディ500ウィナーにして、終盤着々とポイントを積み上げ、大逃げをしていたパワーを12ポイント差にまで追いつめたダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)だ。

また今季は、フランキッティのチームメイトであるスコット・ディクソンが、先のもてぎ戦でオーバルコースのチャンピオタイトル「AJ. フォイト・トロフィ」を獲得したのをはじめ、シリーズポイントの上位にペンスキー、ガナッシが並んでいる。両者の戦いは又、シリーズの雄を競うチーム戦の様相も呈していた。

2ディレース初日に行われた予選は、僅差でのタイトル争いの最中とあって、ポイント加算のあるポールポジションポイントの行方にも関心が集まった。予選タイムアタックでトップタイムを計測したのはフランキッティ。ポールポジションを獲得しポイント差を11に詰めたフランキッティに続き、2番手にはディクソンと予選はガナッシ勢が1-2で今季初のフロントロー独占を決めた。

対するペンスキー勢はパワーが3番手、ライアン・ブリスコーが4番手。佐藤琢磨(KVレーシング・テクノロジー)は経験値が不足する難コースに悩みながらもトップ10に食い込むタイムを計測し予選9位。武藤英紀(ニューマン・ハース・レーシング)も攻めのセッティングが裏目に出て順位こそ26番手とふるわなかったものの、決勝レースセッティングに自信を深めレースへ挑むこととなった。

サーキットを照らすライトが点灯した午後7時、200周先のゴールを目指しタイトルを決するナイトレースがスタートした。

27台のマシンが一斉にファーストターンへ飛び込む中、超人的なスタートダッシュでトニー・カナーン(アンドレッティ・オートスポーツ)が8位から一気にペンスキー2台を抜き去り3番手へと躍進。ポールスタートのフランキッティは、結果としてチームメイトのディクソンとペンスキー勢の間に割ってはいったカナーンに背後を守られる恰好で、レース序盤戦をリード。ペンスキー勢・ブリスコーの猛追をも退け、レース中盤には早々に最多リードラップのボーナスポイントをも手中に収めた。

一方、トップグループの熾烈なバトルに自ら加わることはないものの、上位グループに常駐し虎視眈々と躍進を狙っているかに見えたパワーだが、135周、混戦の中でウォールにブラッシュ。マシンはリアサスペンションのアームが曲がるダメージを受けてしまった。このアクシデントによりレースはフルコースコーションで中断。

急ぎ修復作業が行われたが、パワーは大きくポジションを下げてしまった。痛恨のクラッシュを喫したパワーは、あきらめることなくレースに復帰したものの、リスタート直後にフロントにもダメージを受けていることが発覚しリタイア。25位で最終戦を終えることとなり、フランキッティがシリーズタイトルに大手をかけた。

ここからの大詰めは、コース上での激しいバトルと、残り燃料を睨んでの頭脳戦が入り乱れ、インディカー・シリーズらしい最後の最後まで判らない白熱のレース展開となった。

パワーのリタイアにより、9位以内のフィニッシュでチャンピオンタイトルに手が届く計算のフランキッティは、10位以下は周回遅れという状況もあり燃費重視の安全走行で完走を目指し、替ってチームメイトのディクソンがトップに躍進。際どい残燃料で、追いすがるダニカ・パトリック、カナーンのアンドレッティ勢を振り切りチェッカード。今季3勝目をあげた。

フランキッティは8位フィニッシュを果し、シリーズ・チャンピオンのタイトルを獲得。チップ・ガナッシ・レーシングは、最終戦のウィニングチームにして、シリーズタイトル3連覇の偉業を成し遂げた。

9番手スタートの佐藤琢磨は、難コースと集団の中での走行セッティングに苦しみ序盤で大きく後退したが、粘りの走行で最終盤には13位まで再浮上。混乱の中位グループの中で、他のマシンとの接触等のアクシデントに見舞われながらも18位で完走を果した。26番手の最後尾からのスタートした武藤英紀は、ピットストップをずらす作戦に出てポジションアップを目指し、20位で最終戦を終えた。

ダリオ・フランキッティのコメント:「素晴らしい一日になった。タイトル争いをしていたパワーがリタイアした後の終盤は、自分が為すべきこと=完走することに集中して走り続けた。チャンピオンになりたい、チームのみんなのために勝ちたいという想いと、プレッシャーの中でゴールまで走り続けることができ、3度目のタイトルを獲得できたことは本当にうれしい。今年はインディ500で2度目の勝利を挙げることもできた。素晴らしいチームの一員であることに感謝したい」

スコット・ディクソンのコメント:「今日のフランキッティは本当に速かった。レースは終盤にフルコースコーションが連続し、燃費がカギを握ることとなった。またコース上の攻防もかなり荒っぽいものになっていたが、リードを維持して逃げきることができた。そして、チームメイトのフランキッティが3度目のタイトルを獲得できたことは本当に嬉しい。今シーズンは苦しい戦いが続いていたが、我々はチームとして、最後に最高の結果を手に入れることができた」

佐藤琢磨のコメント:「本当に厳しいレースでした。序盤はマシンバランスに苦労しましたが、最初のピットストップでセッティングを変更し、そこからマシンはよくなりました。が、スピードが充分でない、慎重なセッティングになり過ぎていたと思います。激しいバトルが続くレース展開で、終盤には何度か接触もありました。最後はターン3で2台に挟み撃ちにされるような恰好になり、アクシデントを避けるためポジションを落としてしまいました。今日はピットでのミスもありませんでした。シーズンを通してハードワークを続けてくれたクルーたちに感謝します。もっといい結果を残したかったですが、多くのことを学び、吸収できた一年でした」

武藤英紀のコメント:「今日はリスタートなどでのハンドリングが悪く、集団の中でのマシンは安定しなかったのですが、落ち着いてきた状態ではスピードを上げ、何台かをパスすることもできました。今季は終盤に向かうにつれ調子も上がってきていたので、ここで最終戦を迎えたのは残念ではありますが、ドライビングスキルを磨くこともできたし、マシンセッティングについても昨年まで以上に深く考え、多くを学べた一年でした」

《ケニー中嶋》

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