【D視点】心配りがにくい独ミニバン…VW シャラン

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【D視点】心配りがにくい独ミニバン…VW シャラン
【D視点】心配りがにくい独ミニバン…VW シャラン 全 6 枚 拡大写真
1
 ドイツ生まれを侮るなかれ!

フォルクスワーゲンのミニバンで、新型で2代目の『シャラン』は、1.4リットルTSIエンジンに組み合せた6速DSGと、環境コンセプト「ブルーモーションテクノロジー」(アイドルストップやブレーキエネルギー回生システムなど)とが技術的なアピールポイント。

ボディサイズは、全長4855mm×全幅1910mm×全高1750mm、車両重量1835kg、そして車両価額は379万円から。『ゴルフトゥーラン』比較では、全長が450mm、全幅、全高100mm程大きく、これでやっと日本のミニバンに対抗できるサイズとなった。

シャランのファーストインプレッションはゴルフトゥーランを引き伸ばしたようなデザインだが、シンプルなだけではなく価額相応の高級感もある。走りや安全を重視するドイツ車が、日本のミニバンの十八番であるリアの電動スライドドアを採用したのは驚くべき心配りといえる。

加えて、7人の乗車全席独立シートも日本のミニバンと同様にシートアレンジも簡単に出来るようになっている。シャランの販売は、2011年2月からで、先行予約で数々の特典も用意して拡販に力を入れている。ジャパンオリジナルをいつまでも威張ってはおれないようだ。


2
 日本のミニバンがベンチマークか

フォルクスワーゲンも、既に日本のミニバンマーケットにゴルフトゥーランを参入させ一定の成果を収めている。しかし、日本のミニバン市場はゴルフトゥーランより大きなサイズが主流なので、歯がゆく思っていたに違いない。

初代シャランは日本では馴染みが少ないが、フォルクスワーゲンが欧州のミニバン市場参入のためフォードモーターとの合弁で1995年に開発したモデル。日本でも販売したが、2年程で販売終了となってしまったモデルなので、再上陸の成否が注目される。

15年ぶりのモデルチェンジが示すように、日本ではマーケットの主流であるミニバンも、欧州では違う。自尊心の強いドイツ人が、ジャパンオリジナルの安楽ミニバンを真似するのは驚きであると同時に、マーケット奪還への強い想いを感じさせる。

動機がいかなるものでも、魅力的な製品であれば、世界に広まることは予想に難くない。文化の伝播も、このような魅力を動機とする例が多いからだ。ジャパンオリジナルのミニバンコンセプトが、ベンチマークになったとしたら自信も湧く。


3
 ジャパニーズミニバンの元祖は山車?

超豪華な装飾、電飾、そして絵の美しさを競っているクルマを、「デコレーショントラック」、略してデコトラと呼ぶ。日本のおもちゃメーカーが45年ほど前に作った造語なのだそうだ。原型は、水産物運送に携わるオート三輪車の錆びて痛んだ荷箱の補修にステンレス鋼板をリベット止めしたのが始まりと言われている。

1970年代に全国的なブームとなり、映画『トラック野郎』に憧れて運送業界に入った若者の話も聞く。現在では、反社会的と見られるようになり、路上では見られなくなった。しかし、アジアでは似たような装飾トラックが現在でも多く、装飾トラックには人を引き付ける魅力があるようだ。

民間信仰では、神は山の頂の岩や木を依り代として天から降臨することから、斎場を設けて祭祀が行われていた。現在の祭礼で巡航される山車は、このような斎場が変化したものだが、豪華な飾りでありがたい感じを表現している。起源は違うが、人々に好まれるという点は、デコトラと同じといえる。

日本のラグジュアリーなミニバンも、装飾過剰なところがデコトラや山車を連想させる。現代の庶民は、御利益を期待することはないであろうが、にぎやかでありがたいものを所有する喜びを密かに味わっているのかもしれない。ラグジュアリーなミニバンが日本で大人気の理由がこの点にあるとしたら、シャランの戦いは容易ではなさそうだ。

D視点:
デザインの視点
筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。【D視点】連載を1冊にまとめた『2007【D視点】2003 カーデザインの視点』を上梓した。

《松井孝晏》

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