ノックピンという部品をご存知だろうか。エンジンやトランスミッションなどのハウジングケースやシリンダーとシリンダーヘッドなどの接合部に組み込まれる、正確な位置決めを行なうためのピンである。
木造のダボに近いものだと考えてもいいが、ノックピンは位置決めだけを行なうもので、固定するのはボルト&ナットの役目だ。ボルトが貫通する中空構造のノックピンも使われており、構造上ボルトでは遊びが大きく、位置決めが難しいことをノックピンが補っている。
人とくるまのテクノロジー展で、このノックピンをズラリと並べているブースがあった。水野鉄工所という歴史を感じさせる部品メーカーで、トヨタ車の80%に同社のノックピンが採用されているという。
このノックピン、てっきり鉄の中実棒かパイプを短く切断して両端を削って作っていると思ったら、何と鍛造だのだとか。なるほど、精度が問題となる部品だから鍛造の方が優れているのか。そう確かめたら、そうではない。鍛造の方が早く安く作れるからなのだとか。
実際の作り方は鋼の線材を工作機械が取り込んでいき、短くカットすると共に金型に打ち込んで変形させる。ノックピンになるには5回の工程を経なければならないが、それでも1分間に120個が作り出されると言う。なるほど、両端を削るより叩いた方が早く作れるのか。
このほか、エンジンのバルブ回りの部品やAT内部の部品など精密で強度が求められる小さいパーツを作るのが得意らしい。
そもそも昭和2年からオート三輪を生産していた自動車メーカーだったこともあり、単なる下請けとして依頼された部品を作り続けるだけではない社風があるようだ。日本のものづくりの実力の一辺を、こんなところにも感じさせたのだ。