日産自動車は13日、燃費性能や加速性能を高めたFWD(前輪駆動)用新型変速機「新世代エクストロニックCVT」2機種を発表した。供給元はトランスミッション大手のジヤトコで、リリースされるのは許容トルク250Nm(25.5kgm)の2~2.5リットル向け、同380Nm(38.7kgm)の2.5~3.5リットル向けの2機種。デビューは北米の主力モデル『アルティマ』、その後もミドルクラスセダンに順次採用されるもようだ。
日産は油圧機構の動作に電子制御を積極介入させることで燃費性能、応答性、アクセル操作と車速の一致感などを高めたエクストロニックCVTを環境技術のコアテクノロジーのひとつに位置づけており、コンパクトカーだけでなく2リットル以上のモデルにも積極展開している。日本国内モデルでもミドルクラスセダン『ティアナ』、大型ミニバン『エルグランド』をはじめ、採用モデルは多い。
新型エクストロニックCVTは、それら現行モデルのマイナーチェンジ版ではなく、新設計と言っていいほどの大改良を受けている。バリエーター(CVTのベルトを挟みつけて変速比を変える円すい形の基幹部品)のシャフト系を大幅に細くすることでバリエーターを大型化することなく変速レンジを拡大した。
ローからハイまでの変速比幅は実に7.0:1に達する。これは従来のCVTのトップランナーだったスバル製チェーンドライブ式「リニアトロニック」の6.3:1、さらには有段ATの頂点でレクサス『LS460』などに搭載されるアイシンAW製8速ATの6.7:1をしのぐ数値。副変速機を使うことで7.3:1を実現したコンパクトカー用エクストロニックCVT(日産『マーチ』、スズキ『ワゴンR』などに搭載)を例外とすると、目下独走状態のスペックである。
変速比だけでなく、CVTの泣き所といわれるフリクションをオーバーオールで約40%も減削減、重量も現在の一般的な6速ATより軽量化されている。「トランスミッション単体の効率だけを見ても、6速ATにだいぶ近づくことができました。クルーズ時にエンジンの回転数を低く抑えることができるなど、CVTの有利な面も考慮すると、車両搭載状態では6速ATと同等以上と自負しています」(日産関係者)
CVTの改良戦争はグローバルで激化しているが、これまでは独アウディやスバルのチェーンドライブがリードしてきた。ベルト式の新世代エクストロニックCVTがどういう実性能を示すか、興味が湧くところである。