【人とくるまのテクノロジー12】自動車技術会講演「軽を世界に展開する時期」

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本田技術研究所四輪R&Dセンターデザイン開発室室長木越由和氏
本田技術研究所四輪R&Dセンターデザイン開発室室長木越由和氏 全 7 枚 拡大写真

人とくるまのテクノロジー12の自動車技術会春季大会において、デザイン部門委員会企画のフォーラムが開催された。

今年のテーマは「2030・スモールカーでワクワク移動 ~小さなクルマの大きな未来~」とし、4メーカーのデザイン本部長が講演。ホンダは本田技術研究所四輪R&Dセンターデザイン開発室室長木越由和氏が「世界に広げる日本のスモールカー文化」と題し講演を行った。

木越氏は、日本の自動車文化に対して「クルマを所有することが目的であり、価値であった昭和30年代から始まり、セダン信仰、スポーツクーペの洗礼、アウトドア系のSUV、ファミリーミニバンを経て、いまや欧州や北米を追い越して、世界最先端の自動車文化、先端デザインに行きついているのが日本であり、軽自動車なのだと考えている」と述べる。

その、軽自動車ユーザーのほとんどが「自分のクルマのエンジンやミッションの形式、排気量や馬力について知らないと思う。そんなことに興味がないのではないか。大切なのは、道具として自分に合ったクルマであるかどうか」だとする。

そして近年、商品に対する考え方が大きく変わってきたと木越氏はいう。スマートフォンを例に挙げ、「PCでは性能比較がされていたが、スマートフォンは使われているチップがどこのチップでなどを気にする人はいない。重要なのは、何が出来るかだけ」

「これからの時代、生活に根付いた道具というのは、ユーザーにとっては使う価値が重要で、メカニズムは言及しないことが主流になっていくのではないか。使用価値という独自性を強めることで、世界の市場をリードすることが出来るのだと思う」とした。

「日本の軽自動車も、そういった進化をしてきていると思う。個性があり、使いやすく、燃費が良く、キーを捻ればどこへも行ける。しかも維持費が安く、壊れないでいつでも自分のそばにいる。まるで溶け込むように自分の生活に密着している。それで移動することでワクワクする。これこそがこれからの世界で望まれているクルマだ」という。

そこで木越氏はひとつの提案をする。「これは規格の話だが、韓国にも軽自動車カテゴリーがある。2008年に要件が変更され、全体としてクルマが一回り大きくなり、完全に世界のAカテゴリーと呼ばれる小型車市場に合致した規格となった。つまり、韓国の軽自動車はその規格自体が世界基準へと進化した。日本の軽自動車は非常によく出来た商品だが、軽規格は残念ながら世界基準ではない。小型車で世界をリードしていくためには、世界に通用し、かつ、将来的にポテンシャルの高い新しい軽規格を国として検討する時期になっているのかもしれない」。

最後に、「移動はとても楽しくワクワクすることだ。時代が変わり、技術が進化し、自動車の形は変わっていく。しかし、それを使う人間の大きさや気持ちは変化はない。ボディは小さいが、室内はより広く、快適に心地よく使いやすく進化し、機械であることを気にせず、いつも生活に密着した道具として使われる。そういう小型車で世界が変わっていく、そして、変えられるのではと考えている」とした。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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