日本ガイシは、同社が製造した電力貯蔵用NAS(ナトリウム硫黄)電池が昨年9月21日に発生した火災事故の原因と安全強化対策、工場の操業再開について公表した。
火災事故は、NAS電池システムを構成するモジュール電池40台のうち1台に製造不良の単電池が1本あり、その単電池が破壊して高温の溶融物が流出した。溶融物がモジュール電池内のブロック間にある砂層を越えて流出し、隣接するブロックにある単電池との間でショートが発生した。
ショートした単電池間にヒューズが設置されていなかったため、短絡電流が継続的に流れて発熱したことで多数の単電池が破壊して火災が発生し、モジュール電池全体に延焼拡大した。このモジュール電池1台の燃焼により、火炎と高温の溶融物が上段と下段に設置されていた他のモジュール電池内の単電池容器を溶解させ、さらに延焼が拡大した。
安全強化対策では、モジュール電池の延焼防止対策として短絡電流による火災の発生を防止するため、モジュール電池内の単電池間にヒューズを追加する。また、流出した溶融物によるショートの発生を防止するため、モジュール電池内のブロック間を隔てる短絡防止板を設置する。他のモジュール電池への延焼拡大を防止するため、上下のモジュール電池の間に延焼防止板を設置する。
また、火災発生を早期に発見するための監視体制の強化や火災発生に備えた消火設備と防火備品の設置、消火体制を整備する。
同社がまとめた火災事故の原因、延焼防止対策の内容は、危険物保安技術協会を事務局とする第三者委員会の検証により妥当であると評価された。同社では検証結果を踏まえ、消防庁と協議し、監視体制なども含めた安全強化対策を自主的に実施する。
火災事故後、ほぼ全ての顧客に運転停止や運転制限を要請してきたが、設置箇所を管轄する消防当局の指導を受けながら、設置状況に応じた安全強化対策を早期に実施し、運転を再開できるようにするとしている。
火災事故発生以降、NAS電池工場(愛知県小牧市)の操業を中断していたが、原因の究明と安全強化対策の確立を受けて、6月から操業を再開する。