いま最も個性的な外観を持っているクルマ。
シトロエンの“いかに他と違うように見てもらいたい”という熱意に多大なるエネルギーが注がれているのかが伝わってくる。
Aピラーからフロントフェンダーにかけてのメッキパーツやリアクォーターパネル、テールライトなどをはじめとする内外の凝ったディテイルに眼を奪われてしまうが、基本となるフォルムは背が高めのステーションワゴンである。
左右別々に開閉できるスライディングルーフはコロンブスの卵。便利で使いやすい。腕時計のブレスレットをデザインモチーフとしたクラブレザーシート(45万円のオプション)も単なるデザインだけではなく、手触りも掛け心地もホールド感も上質だ。
Aピラーの傾斜が強く、シート高を入念に調整しないと前方視界を妨げることもあるが、その点を除けば視界と運転姿勢は優れている。
出っ張りがなく直方体のトランクルームはリアシートを畳むとさらに広大な空間が出現し、この点でも実用性の高さを忘れていない。これまでのシトロエン流が貫かれている。シトロエンはその奇抜なデザインに目を奪われがちになるが、その本質は実質を尊び実用を重んじるところにある。1.6リッターながら、ガソリン直噴ターボエンジンの力は十分。硬めの乗り心地と大きな最小回転半径がシトロエンらしくないのが惜しい。
5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア・居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★★
金子浩久|モータリングライター
1961年、東京生まれ。主な著書に、『10年10万キロストーリー 1〜4』 『セナと日本人』『地球自動車旅行』『ニッポン・ミニ・ストーリー』『レクサスのジレンマ』『力説自動車』(共著)など。