【クラウドフォース12】モバイル・ソーシャル・クラウドが変えた起業環境[前編]

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クラウドで起業 ! 日本におけるセールスフォース・ドットコムの投資プログラム
クラウドで起業 ! 日本におけるセールスフォース・ドットコムの投資プログラム 全 11 枚 拡大写真

12月6日に開催されたクラウドフォース 2012。本イベントではトヨタ自動車の豊田社長とコリン・パウエルの元米国務長官らの特別セッションをはじめとして、大小様々なセッションが催されたが、その中の1つに「クラウドで起業 ! 日本におけるセールスフォース・ドットコムの投資プログラム」と題したパネルディスカッションがおこなわれた。

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参加者は、司会に『WIRED』日本語版編集長の若林恵氏、パネリストとしてグロービス・キャピタル・パートナーズの仮屋薗聡一氏、米国セールスフォース・ドットコムからジョン・ソマージェイ氏、チームスピリット代表取締役荻島浩司氏、ホットリンク代表取締役CEO内山幸樹氏の計5名。

ソマージェイ氏は、セールスフォースでコーポレートディベロプメント&ストラテジーを担当し、クラウド環境でのカスタムアプリ開発/運用PaaSを提供してきたHerokuやソーシャルメディアのデータマイニングをおこなうRadian 6などの買収案件に関わってきた実績を持つ。また、 チームスピリットは2011年10月にセールスフォースとの資本業務提携を行い、セールスフォースと組み合わせた業務システムを提供。ホットリンクは、Twitterなどソーシャルメディアのビッグデータ分析業務をおこなっており、こちらもセールスフォースとの資本業務提携を12月6日に発表したベンチャー企業だ。

◆2010年で潮目が変わった日本の起業環境

まず若林氏は「このディスカッションで日本は(海外と比較して)停滞しているよね、という暗い話にしないでくれと言われている(笑)」とジョークを飛ばしながらも、「日本の起業環境に問題があるとしたら、一般的にどのような点なのか」と問題提起。

これに対してグロービスの仮屋薗氏は、「ことベンチャーという話になると、そもそも起業家が少ないとか、大企業がベンチャーに非協力的だとか、ベンチャーキャピタルの投資額が少ないといった、いわば都市伝説のようなものが日本では飛び交っているが、これは間違い。日本人は暗い顔して語った方が賢く見えると思っているらしい(笑)」と前置きした上で、「すでに当社が出資した50社以上がIPOしており、現在はスタートアップへの投資活動は非常に活況を呈しているというのが事実。大企業もベンチャー企業さまざまコラボレーションしている」と現状を説明する。

仮屋薗氏によれば、この活況は「リーマンショックから1年2年経たところから潮目が変わった」とのこと。セールスフォースのソマージェイ氏も「日本でもここ数年で起業がたくさん出てきており、間違いなくこれから面白くなるだろう」とベンチャーへの出資・提携を担当する立場から期待を述べた。

ホットリンクの内山氏は自身が起業した1990年代後半を振り返り、「当時、会社を立ち上げるという話をすると、『こいつ気が狂ったんじゃないのかと思われていたはず』」と笑いを取ると、「今は起業が社会的に認められている感はある」と述べ、この10数年の変化への感慨を語った。

またチームスピリットの荻島氏も、「私が起業した時は、ベンチャーと言うよりも『脱サラ』と呼ばれていた(笑)。起業するには(メインの出資者だけでなく)コ・インベスター(共同/相乗り投資家)がどうしても必要。2、3年前あたりから、そういう投資環境というかスタートアップを支援しようという流れができてきたと思う」と述べる。

◆モバイル・ソーシャル・クラウドが変えた起業環境

さらにこのようなスタートアップを支援する流れを決定づけた要因は何か、と問われると、グロービスの仮屋薗氏は、「モバイル・ソーシャル・クラウド」の3点を挙げる。

チームスピリットの荻島氏は「セールスフォースが来た時に開発のコストが劇的に下がった。そのときにスタートアップでもtoBのサービス開発に手が出るようになった」とクラウドの登場が中小の企業にチャンスを与えたという。ホットリンク内山氏も「2000年当時は自社のデータを外部の企業に渡せるか、と風潮だったが、クラウドが一般化することで外部にデータを渡すことへの許容度が一気に上がった」と意識の変化にも言及した。

仮屋薗氏は、「日本はモバイルとソーシャル、この2点については一生懸命やってきた。日本でのこれからの波はクラウドになるだろう」と予測する。

ソマージェイ氏も「クラウドは日本企業のスタートアップにとって強みになる。小さい初期投資で会社を立ち上げられるだけでなく、短期間で顧客を得られる。それからモビリティ。日本はモバイル技術では先に行っているので、ソーシャルと組み合わせれば成功できる可能性も高まるはずだ」と日本の強みを活かしていくべき、と主張する。

◆シリコンバレーと日本、どう違う

ITベンチャーというとシリコンバレーが思い起こされるが、「なぜシリコンバレーがそこまでIT起業の聖地となり得たのか」という疑問を若林氏が提起。セールスフォースのソマージェイ氏は、「投資家が多く資金が集まりやすい」「カリフォルニア大学バークレー校やスタンフォード大学など、優秀な学生が集まる」「他のスタートアップが沢山あり、コラボレーションしやすい」といった環境面を挙げた。

一方日本が努力すべき点としては、ソマージェイ氏は「起業による雇用創出や、ベンチャーが投資することによるインセンティブや税制優遇を働きかけてもいいのではないか」と述べ、行政側のバックアップの必要性も説いた。

仮屋薗氏は、「シリコンバレーは世界最高のベンチャーが生まれるロールモデルだというのは疑いがないが、シリコンバレーと日本は商習慣やお金の流れも違う」と安易なシリコンバレー追随に釘を刺して、こう言う。「日本には日本の成功パターンがある」。

「日本で必要なのはスピード。日本の経営者は(売上よりも)利益を重視する傾向にあるが、当社は損益分岐に至ることよりもシェアとユーザーベースの獲得を第一義に考える。一般的に業績はアルファベットの“J”の形で伸びていくが、Jのくぼみの深い部分に来たときに、資金の面でも人材の面でも産業全体として支えてあげることが重要」と仮屋薗氏。

ホットリンクの内山氏は「僕らのようなソーシャルメディア分析はコストがかかる。でも、そこそこは利益を出さないといけない。お客様のニーズを最優先で聞いてコンスタントに利益を出すののいいが、ビジネスとしては小ぶりになってしまう」と経営の苦悩を語った。(後編に続く)

《北島友和》

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