【ロータス エリーゼS 試乗】実用性がなくても、これ1台で満足できる …諸星陽一

試乗記 輸入車
ロータス エリーゼS
ロータス エリーゼS 全 11 枚 拡大写真

今現在、日本で買える乗用車のなかで実用性のないクルマ上位10台のうちの1台に確実に入るのがロータス『エリーゼ』だ。実用性がないということはイコール乗って最高に楽しいということにほかならない。

だいたい多機能のものは、ひとつの性能の満足度は少ないもの。スイスアーミーナイフは便利だけど、ヒゲを剃るならカミソリだし、マキを割るならナタだ。走らせて楽しいスポーツカーに、荷物が載せられないなんて文句を言っても仕方ない。

ドアを開け運転席に乗り込むだけでもひと苦労。サイドシルは高くて幅広い。よっこらしょっとシートに身体を収めると…たまらない魅力にあふれた光景が目の前に広がる。目線の高さはゴーカート並みで、視界にはいやがおうでもメーターが入る。

さほど重くはないクラッチペダルを踏んで、ギヤを1速に入れる。クラッチ操作はイージーでミート時の感触もつかみやすい。軽くアクセルをあおりながら走り出す。

試乗車に積まれるエンジンはトヨタ製の1.8リットルスーパーチャージャー付きで、220馬力を発生する。低速から高いトルクを発生するエンジン特性ではあるが、さらに3000回転付近から盛り上がってくる感じは、まさにムチを入れる感覚。フラットなトルクカーブのほうが乗りやすく、サーキットでもタイムが出るかも知れないが、乗って楽しいのはこのセッティングだ。標準タイプのエリーゼに積まれる1.6リットル自然吸気に比べると乗りやすさ速さともにレベルが違う。

コーナリングはかなりの安定志向。安全デバイスであるダイナミックパフォーマンスマネージメントが装着されていることもあるが、たとえこれをオフにしたとしても安定指向であることには違いない。

最大の要因はフロントは175/55ZR16、リヤは225/45ZR17と前後で異なるサイズがチョイスされたタイヤ。じつに5サイズ違い。しかもタイヤは高グリップで定評のあるアドバン『ネオバ』だ。

コーナリング中に破綻したら最後、コントロールには相当の技量を必要とするミッドシップリヤドライブのクルマだけに、この設定は安全マージンなのだろうけど、グリップしすぎてしまう。このセッティングは速く走れるけど、面白さならもう少しリヤのグリップが低くてもよさそう。

エリーゼは最近のクルマとしては非常に珍しく、パワステが装着されていない。しかもステアリング径は小さい。駐車場での方向転換などでは少々手間取るが、走り出してしまえばどうってことはない。いやそればかりかパワステがないおかげで、ステアリングインフォメーションはダイレクトかつリニア、路面の状況までつかめてしまう。

ステアリング操作を確実にするためにも、このクルマにはグローブをして乗ったほうがよさそう。そうそう、靴も細身じゃないとペダル操作がやりづらい。エア入りのスニーカーなどもってのほかだ。

車両本体で610万円という設定。この金額でほかのどのクルマが買えるか?…ということを考えるようではすでにエリーゼはショッピングリストから外れているだろう。「610万円、わかりました」という心意気がないと買えないタイプのクルマだ。

パッケージング ★★★
インテリア/居住性 ★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★★
オススメ度 ★★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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