「ジャストサイジング」がプチバン人気後押し…トヨタマーケティングジャパン

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トヨタマーケティングジャパン 増田裕幸氏
トヨタマーケティングジャパン 増田裕幸氏 全 12 枚 拡大写真

"プチバン"と言われるジャンルのクルマを中心に、日本のコンパクトモデルに大きな潮流が訪れている。今まで日本ではバンといえば3列シートのミニバンか、商用バンの2種だったが、近ごろの話題は、この"プチバン"に集まり始めている。

"プチバン"について、トヨタマーケティングジャパンの増田裕幸氏と木内葉子氏に話を聞いた。

"プチバン"は軽自動車と登録車にまたがる新カテゴリー

まず"プチバン"の定義だ。プチバンはボディがコンパクトでシートは2列、リヤドアがスライドドアになるもの、というのがおもな条件。コンパクトという少し曖昧なボディサイズの表現だが、3列仕様のミニバンのような大きさではないということが前提。全幅1700mm以下で全長も4m前後の5ナンバーサイズだと考えればよいだろう。トヨタのラインアップでは『ポルテ』と『スペイド』がプチバンとなる。

この2列シートでスライドドアというパッケージングは、最近のユーティリティ系軽自動車でよく見られるパターンだ。したがって、スライドドア付きの軽自動車もプチバンの仲間ということになる。軽自動車が売れているというニュースはよく耳にするが、軽自動車のなかでもとくに人気となっているのが、リヤにスライドドアを備えるモデル、つまり"プチバン"だ。

プチバンのおもなユーザー層は、子育て世代と子供の手が離れた世代あたりという。夫婦ともにハンドルを握り、通勤や保育園や幼稚園への送迎、普段の買い物、レジャーと幅広い使われ方をするクルマを求めている世代に売れているという。いわば、クルマの実用性についてもっとも厳しい世代に選ばれているのがプチバンというわけだ。

実用性という部分では荷物が積める、足元が広いといった室内スペースの容量感とともに、視界が開けていて死角が少ないなど、取り回しが楽で駐車がしやすいといった部分も含まれている。

◆"プチバン"への乗り換えは、ダウンサイジングユーザーだけではない

昨今のクルマの世界ではダウンサイジングがトレンドだ。その傾向のひとつの現れとしてプチバンが売れているという見方があるが、じつはそればかりではない。たしかにミニバンからダウンサイジングしてプチバンに乗り換えるユーザーは多いのだが、じつは軽自動車からの乗り換えユーザーも多いという。

現行ポルテの場合、トヨタ車からの乗り換えが約7割。これは同一ブランドなのであたり前だろう。ポルテより小さなクルマはトヨタ車には少ないので、トヨタ車からの乗り換えではダウンサイジングとなることが多い。

注目は他社ブランドからの乗り換え。他社ブランドからの乗り換えの場合は、軽自動車が約半分というのだ。つまり全体の15%程度が軽自動車からの乗り換えとなる。

最近は、クルマライフはいずれ軽自動車に行き着く…というような見方をされていることがあるが、実際は違うということが見えてくる。軽自動車→ポルテという乗り換えユーザーのなかには、ミニバン→軽自動車→ポルテというパターンも多いと推測しているという。ミニバンは大きいと感じて一足飛びに軽自動車にしてしまったが、軽自動車はやっぱり小さすぎたということで、プチバンへ乗り換えるということだ。

いろいろなシチュエーションを考えても、たしかに軽プチバンでことが足りてしまうことは多い。しかし、逆にちょっともの足りないことも起きる。たとえば、軽自動車の定員は4人が上限。小型プチバンなら定員は5名。あとひとりが乗れるかどうかは大きな違いだ。であれば7人乗りのミニバンのほうがいい、という意見もあるだろうが、ミニバンは大きすぎて使いづらいというユーザーも多い。軽自動車とほぼ同じ取り回しのよさを兼ね備えながら、プラスαの機能と容量を備えているのが小型プチバンのいいところであり、存在価値なのだ。

◆登録車のプチバン人気は「ジャストサイジング」の現れ

小型車(登録車)のプチバンと軽自動車のプチバンはその成り立ちが違う。軽プチバンはできる限り大きくなることで、プチバンとしての機能を高めてきた。対して小型プチバンはミニバンからのそぎ落としによってプチバンとなった。小型プチバンにはミニバンのDNAが残っているが、残念ながら軽プチバンにそれはないのだ。

サイズに限界のある軽プチバンは、あと数センチ長くすれば、定員乗車プラスベビーカーの搭載が可能とわかっていてもそれができない。対して小型プチバンは、それが可能だ。小型プチバンの優位性はここにある。

日本は長い間、全幅1700mm以下の5ナンバーサイズのクルマがスタンダードとされてきた。最新のショッピングモールなどは別だが、今でも多くの施設のパーキングスペースが5ナンバーサイズを中心とした設計が行われている。こうした環境のなかで5ナンバー枠に収まるサイズで設計されているプチバンは、非常に使い勝手がいい。

小型プチバンのパッケージングは、日本の道路環境や駐車場環境に非常にマッチしている。今まで大きければ便利でミニバンを選んだ人や、価格が安いけど広さは十分で軽自動車を選んだ人たちが、あらためてジャストサイズのクルマは何か?を考え始めたこと、すなわち「ジャストサイジングの傾向」(増田氏)が、プチバンの波となって打ち寄せ始めたのだろう。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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