フォルクスワーゲンの『ザ・ビートル』にカブリオレ仕様が追加された。トップは電動のソフトトップ方式で、ビートルの伝統に則ってインボードされることなく、外側にきれいな形状を持ってたたまれる方式を採用している。
私はかつて初代のユーノス『ロードスター』に乗っていた。このクルマは手動のソフトトップを持つのだが、止まった状態でオープンにするのではなく、走り始めてから「ヨッコラショ」とトップを開けていた。なぜかって、それはカッコつけていたからにほかならない。止まっている状態でモタモタとソフトトップを開けている姿は、じつにカッコ悪いものだ。
その点、このザ・ビートルカブリオレはいい。50km/hまでであれば走りながらもオープンにできる。その間わずか9.5秒だ。高速道路のサービスエリアから出るときだって、走りながらオープンにできるレベルの速度&時間設定だ。オープンで走っているときは若干風を巻き込むけど、大きく気になるレベルではない。肩から下の身体にはあまり風を感じず、太ももも寒くない。
オープンボディならではの心配事はボディの剛性感だが、これがけっこうしっかりとしている。高速道路を100km/hで走っていても剛性不足は感じないし、段差越えでも同様。さらにソフトトップを開けた状態でも、Aピラーまわりがビビるようなこともなかった。
搭載されるエンジンは1.2リットルのターボだが、これが必要にして十分。最高出力も105馬力と控え目だが、高速道路でもワインディングでも十分なトルク感を持っている。組み合わされるミッションは7速のDSGなので、変速時のショックも少ない。ただし、発進時のクリープはないので、軽くアクセルを踏んでやる必要があり、この部分には使いにくさが残る。
2ドアオープンながら、ソフトトップをインボードしないためトランク容量は225リットルと余裕がある。さらにトランクスルーも装備するので、実用性も高い。スポーツカーでもプレミアムカーでもない、オープンカーの魅力が詰め込まれたクルマがこのザ・ビートル カブリオレだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。