【池原照雄の単眼複眼】「第4極」として台頭へ‥‥日産・三菱の軽協業

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OEMでも生産委託でもない新プロジェクト

日産自動車と三菱自動車工業が開発から生産まで協業した軽自動車の第1弾が、6月6日に投入された。既存の商品を提携先のブランドで生産する「OEM」でも、自社開発品を提携先に造ってもらう「生産委託」でもない、自動車業界では前例のないプロジェクトだ。発売日までの事前受注は両社とも1万2000台と好調。軽自動車市場で先行3社と互角に競える「第4極」の台頭を予感させるスタートとなった。

発売したのは日産が『デイズ』、三菱は『eK』シリーズであり、この旧モデルは三菱が日産に『オッティ』としてOEM供給する関係にあった。両社はその協力関係を元に、2010年に商品企画を共同で行い、部品調達や生産でも両社のノウハウをもち寄るという新たな業務提携で合意した。

推進母体として11年6月に折半出資で設立されたのが軽専門の商品企画会社「NMKV」(東京都港区)であり、社長兼CEOは日産の遠藤淳一氏、副社長兼COOには三菱の栗原信一氏が就任した。そこから丸2年で、計画通り第1弾の商品投入を実現した。

評価すべきNMKVのパフォーマンス

近年の新モデル開発は、設計から試作シミュレーションまで3次元データが駆使され、大幅な期間短縮が可能とはいえ、伝統やノウハウも異なる2社でやるとなると話は違う。とりわけ、NMKVが設立されたのは東日本大震災の直後であり、そうした出発当時の混乱も考慮すると、計画に沿った商品化は高く評価されるべきだ。

筆者は2年前にこのプロジェクトが始まった時には、両社の権限や責任の範囲を明確にし、オープンにする技術やノウハウの範囲を広げなければ、成功はおぼつかないと見ていた。実際、簡単ではなかったはずであり、日産の志賀俊之COOは「意見対立など数々の壁を乗り越え、お互いの英知を結集して『デイズ』という成果をもたらした」と、NMKVの頑張りを評価する。

成功すれば次の「スーパーハイト」にもつながる

問題の競争力―。クラス最高の燃費性能や、両社のアイデンティティが伝わってくる区別されたデザイン、「アラウンドビューモニター」など女性が評価しそうな装備類、そして価格も含めた総合力は高くランクできる。合計2万4000台の事前受注は、激戦の軽市場で十分通用する手応えだ。

5月の軽自動車の新車需要は、前年同月比6.7%のマイナスとなった。登録車を含む新車の総市場が減少局面に入った昨年9月以降では最も大きい落ち込みだった。業界では、明らかに日産・三菱連合による新モデルの事前受注活動の影響と分析されている。

月間販売計画はデイズが8000台、eKシリーズは5000台。合わせた1万3000台という数字は、ダイハツ工業、スズキ、ホンダという先行3社のライバルモデルの販売台数と拮抗するボリュームとなる。尾をひくリコール問題で販売網も疲弊している三菱の販売力が、果たしてどこまで持続するかということはある。だが、第1弾がヒットすれば、同じプラットホーム(車台)で14年初めに投入される第2弾のスパーハイトワゴン車も両社には期待できる存在となる。

《池原照雄》

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