水星探査機メッセンジャーの観測結果から、水星の現在の表面の地形が多くの隕石衝突とその後の火山活動で形成されたとする研究成果がネイチャー7月4日版に掲載された。
サウスウェスト研究所のシモーヌ・マーチ博士、クラーク・チャップマン博士らによるチームは、メッセンジャーが水星軌道を周回して観測した1年間の画像から、クレーターが多く残る地形でクレーターの数とサイズを計測。水星の目に見える最古の地形は、40~41億年前のものであり、最初の4億~5億年間の惑星表面の地形は残っていないとしている。
40~41億年前は、後期重爆撃期(LHB)と呼ばれる、隕石が惑星表面に多数衝突した時期にあたる。研究チームは、アポロミッションから得られた岩石サンプルを元にした月クレーター年代学にデータを外挿して水星モデルを作った。後期重爆撃期の後、火山活動が活発になり、水星表面の地形を再形成したという。
「水星の巨大衝突盆地で観測されたクレーターの数と地理的分布を比較し、水星表面の再形成は全球的で、おそらく火山性のものだということがわかりました。水星で見つかった最も若く、巨大な火山は36~38億年前、ちょうどLHBが収束した直後のものです」とマーチ博士はコメントしている。
チャップマン博士は、LHBの期間、水星の薄い地殻に巨大な衝突体が衝突したことでその後の火山活動を引き起こし、火山活動によって現在の水星表面の地形が再形成されたとしている。
メッセンジャー探査機は、NASAのディスカバリー計画のひとつで、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所、カーネギー研究所などが中心となった水星探査機。2004年8月3日に打ち上げられ、数度のスイングバイで加速しながら2011年3月17日に水星軌道に入った。水星の地表を撮影するカメラ、地形を調べるためのレーザー高度計など複数の観測機器を搭載している。