【カーナビタイム for Smartphone】ローカル地図の正確性とスピードに通信の長所を加えた本格ナビ…企画担当者

自動車 テクノロジー カーナビ/カーオーディオ新製品
ナビタイムジャパン 企画部 部長 萩野良尚氏
ナビタイムジャパン 企画部 部長 萩野良尚氏 全 9 枚 拡大写真

2012年8月にAndroid版を皮切りにリリースした『カーナビタイム for Smartphone」。程なくしてiOS版も登場したこのアプリは、地図データを端末側に保存する“オンボード”型のナビサービスだ。

通信圏外でも利用できるだけでなく、自車位置精度にもこだわって開発したというカーナビタイムは、リリース後もさまざまな機能追加がなされてきた。主要機能のポイントと今後の方向性について、ナビタイムジャパンの企画部 部長 萩野良尚氏に話を聞いた。

自車位置精度にこだわったオンボード型アプリ『カーナビタイム for Smartphone』

----:前回のインタビューでは、「10年前の“携帯電話でナビゲーションができる”というインパクトを超えられるようなものをつくっていきたい」とおっしゃっていましたが、あのインタビューの後、オンボード(地図ダウンロード)型アプリとして『カーナビタイム for Smartphone」をリリースされましたね。

萩野:App Storeなどを見てみると、ローカルに地図を持ち、なおかつカーナビユーザーをターゲットにしたアプリの人気が高いです。そこで当社としても、今までカーナビを使っていたけれど、「地図が古い」「自車位置精度が良くない」とか「POI(point of interest:地点情報)が古い」という利用者の不満を、スマートフォンアプリで解消するとともに、カーナビと同様に通信圏外でのナビゲーションと高い自社位置精度を実現するというところで「カーナビタイム」をリリースしました。

----:ナビタイムジャパンでは、オフボード(通信型)のカーナビアプリとして『ドライブサポーター」も提供していますが、『カーナビタイム』との違いはどのような点でしょうか。

萩野:『ドライブサポーター』の特徴であった通信の良いところを守りながらも、ナビとしてのクオリティを上げたものが『カーナビタイム』と捉えていただければと思います。『カーナビタイム』は、「地図を端末側に持っている」というのが特徴で、通信圏外でのナビゲーションや、端末にネットワークデータをもっていることによる、精度の高いマップマッチングが実現できました。高層ビルのふもとや高架下などのGPSの受信が厳しいところでもチューニングをかけて精度を保っています。もちろん、通信圏内ではリアルタイムでの交通情報を加味したルート案内や、最新の地図、スポット検索が可能です。

----:ビルトインタイプのカーナビユーザーでも満足できるだけの精度を目指したと言うことですね。

萩野:ええ。カーナビを使っていたユーザーに対して、スマートフォンでも同じクオリティで使っていただきたいという思いがありました。カーナビとして重要な要素の一つは自車位置精度です。当社では、精度向上のための専用のチームがいて、実際の道路で走りこんだデータを解析して、「iPhoneだと、こんなクセがあるね」「Androidのこの機種にはこういうクセがあるね」と分析し、端末やOSの仕様に応じたチューニングをかけています。

----:ローカルに地図を置いた方が自車位置精度を確保しやすいのはなぜでしょう。

萩野:ローカルにマップデータを置くと「マップマッチング」が使えます。今までのやり方は「ルートマッチング」で、最初にルートを引いて、ちょっとGPSがズレたときは、できるだけ、そのルートに寄せるというもので、すべてサーバー側で処理していました。「マップマッチング」は、ルートではなく、端末内にある地図上の道路形状に沿って、そこに乗せていくというものです。

◆他社にないナビゲーションの魅力を

----:『カーナビタイム』には、他にもユニークな機能が沢山ありますね。一例をご紹介ください。

萩野:設定に「いつもの道優先」という、いわば「学習機能」を持たせています。実際には多少遠回りでも、慣れた道の方が早い、ということもありますよね。この機能には、「標準」と「積極利用」が選べるのですが、調べてみると「積極利用」を選ぶユーザーが多いです。機能をオフにしている人はほとんどいません。やはり、自分の走り慣れた道に対するニーズが高いのだと思います。

----:利用していて便利だなと思うのは、スクロールで日本全国の渋滞情報をチェックできる「渋滞フルマップ」(現時点ではAndroid版のみ対応)ですね。とくにロングドライブの際、この先の渋滞がどうなっているかを簡単に確認出来ます。

萩野:渋滞フルマップは昨年(2012年)の12月に追加した機能です。1画面で渋滞情報を出しているのはおそらく当社だけだと思います。

その他にも、今年のGW前に主要道路の即日更新対応をもう一段階強化しました。たとえば新しい道路の開通日になっていなくても、開通日以降の日付で検索すると、開通後のルートが引けるようになっています。あらかじめネットワークデータに開通の日付を埋めこんでおくことで実現しています。通信型ナビゲーションならではの機能となっています。

◆クラウド時代のプローブデータの利用と音声コントロール

----:前回にお話を聞いたときに、プローブデータを積極的に利用していきたいということでしたが、この1年でどういう進展がありましたか。

萩野:そうですね。プローブを収集する目的の一つは、ナビの精度を上げることです。例えば、渋滞予測にも積極活用しており、プローブデータが増えれば増えるほど、予測の精度がどんどん上がっています。昨年に比べると、精度はかなり上がっています。

実際に、「渋滞フルマップ」でも、未来の渋滞情報を出しており、例えば「8月21日」と設定すれば、その日の情報を取得して渋滞情報を出しています。それが正解か不正解かは、8月21日のリアルタイムの情報と適合させることで分かりますが、その精度は少しずつ確実に上がってきていますね。

----:他にプローブデータを利用したものはあるのですか。

萩野:『カーナビタイム』ではないのですが、『ドライブサポーター』に大型車向けのルート検索機能を追加しました。これは、簡単に言うと、大型車に乗っている方に、大型車用のルートを出すというものです。

その実現に、プローブデータを利用しています。『ドライブサポーター』には「マイカーマネージャー」という機能があり、そこに車種登録すると、燃費計算やルート探索時の燃料消費量予測が可能になります。ここから大型車の車種登録しているユーザーだけのプローブデータを抽出することで、独自の専用ネットワークデータができあがります。メーカーに関係なく、さまざまな車種別のプローブデータを得られることは、非常に価値があると思っています。

----:もうひとつ重要なところでは「音声コントロール」があります。AppleやGoogleはもちろん、トヨタやドコモなど、あちこちで音声コントロールを利用したサービスをスタートさせています。ナビタイムジャパンではどのようなスタンスで取り組むお考えでしょうか。

萩野:音声での操作は、運転中に視線を外さずに済むため「安心・安全」を提供することができます。運転中にカーナビを使うという行為、とくにスマートフォンのような小さい画面で視認・操作するとなると運転車の負担も大きいので、当社としては開発に力を入れていきたいポイントです。

現在はコマンドでの入力になっていますが、今後は自然発話でいかに認識率を向上させていくかが鍵になると思います。

◆共通プラットフォームが迅速な開発を実現させる

----:ナビサービスが数多くある中で、御社の強みをあらためて表現すると、どのようなものになるでしょうか?

萩野:ナビタイムジャパンの強みのひとつはナビゲーションの精度と正確性です。もうひとつは、通信環境を利用した常に最新のリアルタイムデータを持っているところです。それはスポット情報もそうですし、駐車場の満空、渋滞情報、先ほどの道路の開通データなど、常に最新のデータを提供しています。

こうしたリアルタイムのデータの入手は自動化できるものではなく、人海戦術なので、かなりの運用コストが発生します。ですが逆に競合に一朝一夕に追いつかれることもありません。たとえば、スポットデータについてはユーザーから「ここの店は閉店していた」「場所が違う」という指摘もあります。当社ではスポットデータを1日2回更新して、常に最新の状態にしています。

----:データベースの充実がサービスの成否を決める、と。

萩野:当社の強みであり、今後も力を入れていきたいのは、スポットのPOIデータです。この収集をなんとかうまくできないかなと考えています。良質かつ最新のデータを集めたい。カーナビを使うと誰もが分かると思うのですが、当たらないスポットってあるんですよね。

----:検索しても同じスポットがたくさん出てくるのもありますよね。お店の名前で検索すると、お店だけでなく、周辺も出てくる。

萩野:検索結果の最適化はまだまだ改良の余地があると思っています。表示順にしても、「東京タワー」と検索したら、一番上に「東京タワー」が来て欲しいけど、「東京タワー」の近くの何々店のようになることがあります。データマネージメントをしっかりやっていきたいですし、そこも強みにしていきたいですね。

◆今後もカーナビタイムはスピード感を持って取り組む

----:御社は、徒歩に始まり、バスなどの公共交通をはじめ自転車やクルマなど、幅広いナビゲーションサービスを展開しています。それを可能としている理由は。

萩野:当社が提供するすべてのアプリ・サービスには、なにかしらのナビ機能が備わっています。そこでは共通プラットフォームという思想で開発しており、コアの部分はできるだけコンポーネント化して共通で使っていこうという考えです。

----:今後の展望はどのようなものを考えているのでしょうか?

萩野:カーナビタイムに関しては、今後もスピード感を持って機能を追加していこうと考えています。現状がゴールではないということです。実は、カーナビタイムの構想からいうと、現状はまだ4割5割くらいです。

----:その4割5割が100%になるのは、いつになりそうでしょう。

萩野:いつ聞いても4割5割かもしれませんね(笑)。常に新しくやりたいことが出てきますから。真面目な話、常に5割の状態というのは、当然、ハードウエアの進化もありますし、新しいデータが収集できるようになると、新しいサービスも可能になります。常に進化するナビゲーションサービスを考えていきたいですね。

●アプリ情報
【Android版】 月額525円/年額5700円
【iOS版】 30日チケット500円/180日チケット2900円/365日チケット5700円

《聞き手 北島友和・鈴木ケンイチ》

《鈴木ケンイチ》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  3. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  4. 船上で水素を製造できる「エナジー・オブザーバー」が9年間の航海へ
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る