【ゼンリン 地図づくり現場レポート】自動運転への貢献に期待、高精度地図はいかにしてつくられるか

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レーザーで取得した点群情報 点群情報と全方位カメラで撮影した実際の画像を組み合わせ、さらに制御情報が付加され「高精度地図データ」が生成される
レーザーで取得した点群情報 点群情報と全方位カメラで撮影した実際の画像を組み合わせ、さらに制御情報が付加され「高精度地図データ」が生成される 全 11 枚 拡大写真

Googleが自動運転を2017年までに実用化すると宣言して以来、にわかにこの分野が注目されるようになって来た。今や、この分野で遅れることは先進技術に後れを取ることに匹敵する。その核として注目されているのがゼンリンの「高精度地図データ」。その制作現場を追った。

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世界初GPSカーナビへの採用実績 ゼンリンの信頼を支えるのは地道な現地調査

ゼンリンと聞いて、真っ先に不動産屋で必ず見かける住宅地図を思い浮かべる人は少し世代が上の人だと思う。今、ゼンリンが主力としているのは地図データベースで、同社は総売上の約86%をこの分野で稼ぐ。中でもその大半を占めるのがカーナビ用地図データだ。

ゼンリンがカーナビ用地図データとして提供を開始したのは1990年のこと。この年、マツダは三菱電機が開発した世界初のGPSカーナビをユーノス『コスモ』に搭載したが、これに採用されていたのがゼンリンが開発した電子地図データだったのだ。

以来、ゼンリンは市販カーナビの共通フォーマットである「ナビ研フォーマット」を提唱する一方、トヨタや日産などと手を組んでカーナビ用地図データの整備に力を注ぐようになる。その後、フォーマット上の様々な変遷を経て、今では日本国内で販売されるカーナビの約7割近くがゼンリン製地図データを利用するまでになっている。日本のカーナビは、ゼンリンの支えによって発展してきたと言っても過言ではないのだ。

そして今、ゼンリンが新たな分野として取り組んでいるのが、冒頭で述べた「高精度地図データ」である。

ゼンリンがカーナビ用地図データで高い信頼性を得てきたのは、創業時より培ってきた住宅地図にこそその礎がある。カーナビ用地図データは、どのメーカーも国土地理院が発行する1/2万5000分スケールの地図をベースとしているが、この情報だけではクルマが通れるか等の詳細な情報まではわからない。ゼンリンの住宅地図は各建物を一軒ごと調査する、いわゆる“足で調査”して完成させるのが基本。つまり、現地へ赴くことでクルマが通れる道路なのかどうかを確認できるようになり、それがカーナビ用地図データとして高い信頼性につながってきたのだ。

今回ゼンリンが手掛ける「高精度地図データ」はこの考え方をさらに進め、安全・安心なADAS(先進運転支援システム)に貢献する高精度地図データとして研究・開発を進めているものだ。これは、将来、自動運転が実用化されたときに、より高精度な車両の誘導に活かすためのデータベースとして利用されることを想定している。では、この「高精度地図データベース」とは具体的にどんなものなのだろうか。

◆ADAS貢献へ期待高まる「高精度地図データ」とは

ゼンリンの第二事業本部第二事業戦略室の藤尾秀樹氏は、「道路上にあるあらゆる施設などを我々は“地物”と呼んでいますが、これをレーザースキャンとカメラ撮影によって集めて地図化したのがADAS向け高精度地図データなんです」と解説する。

ゼンリンが「高精度地図データ」の開発を始めたのは2008年頃のことだという。「自動車メーカー各社が交通事故の低減や渋滞緩和、エコといった分野で目標を持つ中、これを実現するにはより精度の高い地図データベースが必要になると考えたのがきっかけだが、実はこの時は自動運転に役立てることはほとんど想定していなかった」と藤尾氏は当時を振り返る。そんな研究開発を行っている中、Googleによる自動運転の話題が飛び出すや、自動車業界は一斉にこの流れが加速。既に取り組んでいた「高精度地図データ」がADASに応用可能であると判断されるようになったのだ。

北九州市戸畑区にあるゼンリンテクノセンターの駐車場。そこにはルーフに計測器やカメラを載せた一台のトヨタ・ヴァンガードが駐まっていた。実はこの計測車両こそ、「高精度地図データベース」を作成する上で欠かせない。ルーフにはGPSアンテナやレーザースキャナー、3Dカメラなど、計測に必要な機材がギッシリ。このシステムこそが「高精度地図データ」作成の要となっている。

これまで地図データの作成ではカメラによる撮影映像を元にしてきたが、この場合、建物や道路施設などの情報は確認用データとして利用するのがせいぜいだ。レーザースキャナーを使うとこの環境は一変する。短時間で広範囲の地形や建物などの詳細情報が3次元座標として捉えることが可能になり、それはPCを使って簡単に展開できるようになる。しかも、座標の一つひとつには位置補正を受けた高精度なGPSデータもリンクされており、道路施設情報の距離を地図上の中心線や道路境界線と照らし合わせれば走行レーンを特定可能になるのだ。

その効果は計り知れない。この情報を地図データに反映させると、横断歩道のペイント情報、分離帯の切れ目といった部分までも、見だだけの情報ではなく、正確な位置情報となって捉えられるようになる。藤尾氏は「衝突軽減ブレーキシステムがどんどん普及していますが、これはあくまで縦方向の制御であって、これはカメラなどのセンサーによって対応できます。しかし、車線変更や車線合流、交差点での入退出など横方向の動きまでは対応できません」と話す。つまり、この高精度な地図データがあれば、ステアリング操舵による危険回避にまで活用範囲が広がってくるというわけだ。

たとえば、一般道を走行中に歩行者が飛び出してきたとする。車両は一瞬にして回避行動を行う必要があるが、その周囲に何があるかをレーザーなどの車載センサーだけで把握するのはどうしても限界は出てくる。この時、周囲の施設について位置情報まで高精度に把握できている地図データがあれば、車両はその情報も判断材料として使い、より適切な回避行動に移れるというわけだ。

ただ、このレーザースキャニングだけでは取得時にエラーも発生する。レーザーを被写体に向けて発射すると標識や看板などは反射してしまい、これらは“真っ黒”状態で表現されてしまうのだ。そこで、同時装着されている3Dビデオカメラが役に立つ。残念なながらこの情報を反映させるにはこれまでと同様、手作業となってしまうが、この組み合わせによって「高精度地図データベース」は完成されていくというわけだ。

◆自動運転に直結する技術へとつながる

自動運転は取得した様々な情報を、いかに正確にリアルタイムで処理して反映できるかがポイントとなる。世界中で地図データベースの整備に乗り出しているGoogleが、ストリートビューという手法を経て自動運転に道筋をつけてきたのもこの情報の蓄積に自信が持てたからに他ならない。誤解を恐れずに言わせてもらえば、これとて足で稼いで地図データベースを作成してきたゼンリンの手法を、カメラを利用する形で辿ったものと筆者は理解している。つまり、これを裏返せば、足を使って現場を把握していくという考え方に基づいたゼンリンの「高精度地図データ」の整備は、自動運転に直結する技術へとつながるとも言えるのだ。

自動運転は現在、車両側のセンシングによって進化を遂げている状態にあるが、あらゆる道路上で完全な自動運転が実現するには、法整備も含め、課題が山積みだ。それらをクリアする意味でも今後は車々間/路車間に加え、地図データとのリンクも必須となる時期が必ず訪れるのは間違いない。すでにゼンリンは「レーザースキャナー他の計測器を搭載した車両を全国に3台配備し、大都市を中心にデータ整備に着手している(藤尾氏)」という。ITS世界会議で見た東京・お台場付近の「高精度地図データ」が全国で整備される日もそう遠くはない。自動運転の実現へ向けて準備は着々と整い始めているのだ。

《会田肇》

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