マツダ『デミオEV』にロータリーエンジンをレンジエクステンダーとして搭載したプロトタイプに試乗する機会を得た。
基本的にはデミオのEVに330ccのロータリーエンジンを発電機として追加搭載しただけと考えていい。
走り出して時速が10km/hを超えるとエンジンが始動して充電を開始するが、エンジンが始動したことはよほど注意していないと気づかない。これもロータリーエンジンならではのよさといえる。エンジンは定常運転で、アクセル操作に対して回転が上下することはない。ただし、速度に応じてエンジン回転を上げて充電を強めるセッティングはしてあるという。
デミオEVの航続距離はフル充電で約200kmとなっているが、このレンジエクステンダーは9リットルの燃料タンクを備えることで、デミオEVの航続距離の2倍となる400km程度にまで延長することが可能だという。つまりエンジンでの燃費は約20km/リットルということだ。一般的に燃費が悪いと思われがちなロータリーエンジンだが、じつはエンジン回転を上げ下げしない定常運転ではかなりいい燃費を出すことが可能。つまり、レンジエクステンダー用としての性能は高いのだ。
さらに、エンジン本体がコンパクトなので、非常に小さなユニットでレンジエクステンダーが作れるという部分も見逃せない。このデミオに採用されているレンジエクステンダーも充電器までを含めた重量が約100kgで、ラゲッジルーム下に装着可能。車内をほとんど圧迫することがない。
スポーツカー用エンジンとして登場し、ル・マン24時間レースを制したマツダのロータリーエンジンは、新たな分野での活躍に向けて進化を続けているのだ。
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:プロトタイプカーのため未評価
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。