パブリカスポーツ復元への想い「時代を感じさせないオリジナリティがある」

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諸星和夫氏講演
諸星和夫氏講演 全 13 枚 拡大写真

トヨタ博物館で始まった企画展「パブリカスポーツ復元の軌跡~夢を繋ぐ~」初日の1月18日、復元プロジェクトの中心人物であるトヨタ自動車デザイン部OBの諸星和夫氏による「復元に懸けた想い」と題したトークショーが、同館新館大ホールで開催された。

1962年の第9回東京自動車ショー当時学生だった諸星氏は、展示されたパブリカスポーツを見て「ホンダS360と違い、時代を感じさせないオリジナリティがある」と魅せられたことでトヨタへ入社を決めたという。定年退職後、パブリカスポーツへの思いがつのり、07年から復元プロジェクトを始めることに至った。

諸星氏が07年にレーシングカーなどのモデルを作っている株式会社ブーメラン社長安藤純一氏の会社に行った際、安藤氏が作ったパブリカスポーツの1/5スケールモデルが置かれていたことから意気投合。その後は様々な専門家を口説きながら集め、プロジェクトが進んだ。最初は写真程度しかなかった資料から図面を起こしたが、途中でパブリカスポーツの開発当時、1/5全体設計図を描いたという関東自動車工業OBの満沢誠氏(参加当時84歳)が加わったことで、当時の図面も見つかり、プロジェクトは加速したという。

パブリカスポーツは、第二次大戦末期にキ94という戦闘機を開発した、飛行機のチーフエンジニアとしては最も若い世代となる故長谷川龍雄氏(初代カローラ主査)が、トヨタ入社後、実験車両として考えたもので、製作は関東自動車工業に委託された。関東自動車では責任者の佐藤章蔵氏(日産在籍時にブルーバード310系をデザイン)、茂木信明氏らのデザイナー、実務の吉田昌年氏ら6名が担当。このうち茂木氏が当時のメモを数多く残しており、それが遺族のもとで見つかったことで復元作業が正しかった事が検証できたという。

パブリカスポーツ、そしてトヨタスポーツ800は今見ると、世界中のどのクルマにも似ていない独自の雰囲気を持っているが、諸星氏によれば、それは長谷川氏が研究実験用ゆえ売るためであるとか時代性であるとかを考えず、真理を目指した理想的な設計をし、概念をカタチにしてストレートに表したためとのこと。飛行機設計者らしいものの考え方で、「真なるもの」の追求によってできたのだという。

航空機のようなキャノピーや二重フロア構造を持つパブリカスポーツだが、その復元車を風洞実験にかけたところ、そのCd値は0.30と設計通りとなった。空気の流れは美しく、そのわけはキャノピーゆえ球面ガラスを採用できたことにもあるという。こうしたスタイリングはやがてトヨタスポーツ800に受け継がれ、来年生誕50周年となる今も愛され続けている。この日は全国からトヨタスポーツ800が26台ほどあつまり、オーナーはトークショーに熱心に聞き入っていた。

企画展「パブリカスポーツ復元の軌跡~夢を繋ぐ~」は4月6日(日)まで愛知県長久手市のトヨタ博物館で開催されている。なお3月15日には安藤純一氏の「パブリカスポーツ復元秘話」と題したトークショー(先着120名)もある。

《水野誠志朗@DAYS》

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