言わずと知れたF1チームのマクラーレン(組織としては別)が製作したロードモデルが『MP4-12C』。当初はクローズドボディのクーペのみのラインアップだったが、2012年からスパイダーが追加されている。
3000万円のプライスタグがつけられたマクラーレン製のスーパーカー。ちょっとビビリながら乗りこんだ。イギリス車ということで、当然右ハンドルだ。低く設定されたドライバーズシートに座って見える風景は、まごうことなきスーパーカーのもの。しかし、同日にランボルギーニ『アヴェンタドール』に試乗していたためか、その雰囲気はかなり落ち着いたものに感じる。
エンジンを始動し、走り出してもその落ち着き感は失われない。625馬力のピークパワーを持つ3.8リットルV8エンジンは、圧倒的なパワフルさを示すのだが、発進時は適度にトルクが抑えられ、ゆっくりとアクセルペダルを踏み込めば、じつにスムーズにスタートすることができる。もちろん、そこからアクセルペダルを踏み込んだ際の加速感は、別次元のものだ。
驚くべきは圧倒的パフォーマンスを誇りながらも、乗り心地やハンドリングにはジェントルさにあふれているのだ。この落ち着き感をもたらしている最大の要因は、カーボン製のモノシェル・シャシーにほかならない。圧倒的に高いシャシー剛性によって、サスペンションは正確無比に作動し、ピレリ『P ZERO』のパフォーマンスを完璧に引き出している。
ハイパフォーマンスなスーパーカーでありながら、ラグジュアリーカーなみの乗り心地を両立しているマクラーレン12Cは、イギリスのスポーツカーがもつDNAを現代に受け継ぐ正当なモデルだと感じることができる貴重な一台だ。ただし、それを感じるには、それ相応の経済力が必要。あまりに高価なモデルなので、今回の星印評価は価格を考慮せずにおこなった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。