【インタビュー】バランスウェイトひとつにも、こだわりと思いやりを…マルエム代表取締役 巖谷祐一氏

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マルエム 代表取締役 巖谷祐一氏
マルエム 代表取締役 巖谷祐一氏 全 12 枚 拡大写真

ホイールに取り付けるバランスウェイトやタイヤの空気漏れを抑えるバルブキャップ。いずれも何気ないパーツではあるが、乗り心地や安全に関わる非常に重要な存在だ。一見地味で単純に見えるため、「どこが作っても同じ」と思ってはいないだろうか。

◆整備工場の“縁の下の力持ち”

1972年の創業以来40年にわたり、品質へのこだわりを持って、そのバランスウェイトを始めとする鉄/鉛製品を作ってきたメーカーがマルエム。同社はウェイト/バルブツール、さらにはカー用品店やディーラーなどで使われるフェンダーカバーに至るまで、整備工場の“縁の下の力持ち”として主にtoB向け用品を開発・製造・供給してきたメーカーだ。

今回、そのマルエムの代表取締役、巖谷祐一氏にインタビュー。巖谷氏は、学生時代のガソリンスタンドでのアルバイト経験に始まり、国産自動車ディーラーのサービスフロント、そしてカー用品店での本社勤務を経て、同社に入社。先代の社長から事業を引継ぎ、現在に至っている。

◆簡単にはがれない、見た目も損なわないバランスウェイト

バランスウェイトはかつては鉛が、現在では鉄が主流。ホイールの内側に貼り付けるだけのシンプルなパーツではあるが、バランスが合っていなければ乗り心地の悪化につながり、空気圧の低いタイヤではバーストの遠因にもなりかねない安全に関わる重要なパーツだ。ともすれば海外メーカーの安価な製品に取って代わられてしまうのがこの業界のならいだが、ジャパンクオリティを武器に、同社の製品は部品卸からカー用品店に至るまで、大きな支持を得ている。その理由はなぜなのか。

「当社のバランスウェイトは、個々のウェイトを面取りをすることでホイールの曲面に貼り付けやすくする工夫をしています。こうすることでホイールに確実にフィットし、水や泥の浸入によってウェイトがはがれ落ちてしまうことを防いでいます。また、昨今ではドレスアップとしてガンメタ塗装のホイールが増えてきましたので、ホイールのデザインになじむように焼付け塗装をしたウェイトも用意しています」(巖谷氏)。

デザインやカラーにとどまらず、品質についても相当なこだわりようだ。巖谷氏は、「最近はホイール、タイヤとも製造の精度が高くなってきています。タイヤは真円にかぎりなく近くなっており、バランスウェイトの重量は次第に減ってきています。こうした精度向上に対応して、当社のウェイトでは重量精度はプラス(重量増)0%、マイナス(重量減)5%以内に抑えています」と説明する。

また同社は、タイヤのエアバルブのキャップも製造しているが、ここにも品質へのこだわりがある。「当社のバルブキャップは専用の金型を起こし、ゴムの成分もオリジナルです。JIS規格でも耐久性に優れた品質とし、工場では強度検査やエア漏れなどの検査もおこなっています。また、経年劣化によるオゾンクラック(ひび割れ)を防ぐためにオイルによるコーティングをするなど、品質には万全を期しています」(巖谷氏)。

◆ドレスアップ需要を後押しするクロムメッキのエアバルブスリーブ

バランスウェイトやバルブキャップに続くマルエムの主力製品として、ここ数年急速に販売が伸ばしているのがクロムメッキのエアバルブスリーブ/キャップだ。タイヤの空気注入口とキャップはゴム製だが、それに被せるもの。メッキや塗装ホイール向けのドレスアップパーツとして、人気を集めている。

「バランスウェイトやエアバルブキャップは、一定の期間で必ず交換するもの。1回買ったらそれで終わりではありません。当社のエアバルブキャップは独自規格品なので、当社製のバルブとキャップの組み合わせでなければ取り付けることができないのです。また、クロムメッキのエアバルブスリーブは、細かいパーツではありますが、ドレスアップ効果の高さが受けています。オーナーにとっては、一度こだわると次の交換時にも付けないわけにいきませんから」。リピーターを獲得するための戦略がそこにある。

「価格競争の厳しいタイヤ/ホイール業界において、エアバルブスリーブは売上をアドオンできる魅力的な商材です。そういう理由もあって、お店側からお客様に積極的に勧めていただいていることも、需要が伸びている要因です」と巖谷氏は説明する。

◆密なコミュニケーションが顧客を広げる

マルエムは、流通対応にも抜かりがない。たとえば、製品の販売ロットを微細化。「バランスウェイトの場合、100個といったまとまった数の納品なら当然単価は安くなるのですが、最近はなるべく在庫を抱えない方針のお店も増えていますので小ロットのパッケージもかなり需要があります。特にタイヤ専業店やガソリンスタンドにたいしては、10個1パックの少量品も出しています。そうすることで、タイヤ販売の少ないお店でも買っていただけるような対応をいち早くおこないました」。

「“いいものを作る”というのはもちろん最も大事なポイントですが、ディーラーでのサービスフロント、そしてカー用品店本社ので開発営業の経験から、クレームやトラブルに対してもきちんと対応して、改善していく。エンジニアから接客の現場まで、コミュニケーションを常にとることも重要だと痛感しています」(巖谷氏)。マルエムが40年の長きにわたって業界に幅広く支持を得ている背景には、ドレスアップのトレンドを捉える先見性、専業店やカー用品店といった流通への配慮やサポート体制があってこそだ。

《北島友和》

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