【フォード エコスポーツ 試乗】スタートから60km/hまでの加速特性が魅力…西村直人

試乗記 輸入車
フォード・エコスポーツ
フォード・エコスポーツ 全 10 枚 拡大写真

フォード『エコスポーツ』は世界的に引き合いの強いコンパクトサイズのSUVだ。

手軽な車両価格(246万円)もさることながら、ボディサイズからくる扱いやすさと、セダン以上ミニバン以下という絶妙な着座位置(地上から約700mm)により乗り降りが非常に楽であることから若者から高い年齢層まで幅広く支持されている。また、こうした高さのある着座位置は広い視界も生み出してくれるから、混雑した都市部でも先々の交通環境が見渡せるなど安全な運転環境をも手に入れやすい。

大きな開口面積の5ピースフロントグリルによって押し出しそのものは強く、4195mmの全長に対して幅広の全幅(1765mm)ということも手伝って存在感は大きい。また、4WDモデルの設定はないが最低地上高は180mm(渡河水深550mm/車速7km/h以下)と大きく、アプローチ/ディパーチャーアングルも25°/35°とゆとりが大きい。リヤゲートは横開き式。向かって右側が開くため左側通行の日本では使い勝手が多少落ちてしまうものの、ゲートノブは右リヤコンビランプにビルトインされておりスマートだ。

インテリアはベースモデルとなった『フィエスタ』と同じくコンソール部分を主軸としたデザイン手法を採る。他車ではカーナビモニターが配置されることが多いセンタークラスター上部には、各種走行情報を表示する4.2インチのセンターディスプレイが収っている。

走りは好き嫌いが分かれるだろうが、私は非常に好意的に解釈した。直列4気筒1.5リットル(111PS/14.3kgf・m)+6速DCT(各ギヤ段のギヤ比はフィエスタと同一だがギヤ段セットにより2つ存在するファイルギヤ比の両方が約11.5%ローギヤード化)の組み合わせはスペック的に平凡ながら、車両重量1270kgのボディをけっこう活発に走らせる。

なかでも気に入ったのはスタートから60km/h程度までの加速特性だ。CVTにはない有段ギヤならではのダイレクトな走行フィールを堪能できる。とはいえ、活発な走りと引き替えに物理的な課題を克服するため変速回数は多くなり、ストップ&ゴーを繰り返す都市部では煩わしさを覚えるかもしれない。その点への理解度がエコスポーツとの付き合い方を大きく左右すると実感した。

高速道路ではエンジントルクの細さを補うためにアクセル開度が大きくなりがちだ。結果的に速度維持に意識を集中せざるを得ない場面が多い。こういったシーンではフィエスタが搭載するロングストローク型の直列3気筒ターボエンジンである1.0リットルエコブースト(100PS/17.3kgf・m)が一枚上手だ。

惜しいのはDレンジのままではシフトレバー右のマニュアルシフトスイッチが機能しないこと。フィエスタと同じくSレンジに移動させれば機能するのだが、ちょっとした下り勾配路でエンジンブレーキを必要とする際は、正直その動作がもどかしい。DCTそのものは切れのあるシフトフィールが味わえるだけに残念だ。

乗り味も気に入った。フィエスタのようなしなやかさは薄れるが、それでも路面の凹凸に対してタイヤ、サスペンション、シートの各減衰力がマッチする領域が広く、少なくとも1名乗車での市街地であれば走り、乗り味に不足はない。

ところで日本へ導入されるエコスポーツの生産工場は、インド・チェンナイにある。私は昨年初めて別の取材でチェンナイを訪れたのだが活気溢れる都市部の街並みに驚いた。その昔、貿易で栄えたマドラスと呼ばれていたチェンナイだが、今や自動車産業の中心地として急成長。ダイムラー社、ルノー日産などが相次いで組み立て工場を建設し、主にアジア・アフリカ地域へ完成車を輸出している。フォードのチェンナイ生産工場では部品の現地調達率が年々高まり、従業員の方々の意識レベルも非常に高いという。また、高い品質が求められる日本へ完成車を輸出することに大きな誇りを感じているというが、厳しいフォード独自の品質基準をクリアしているだけあって完成度はとても高かった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★

西村直人|モータージャーナリスト
1972年1月東京生まれ。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事。2014-2015日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。全日本交通安全協会・東京二輪車安全運転推進委員会指導員。

《西村直人@NAC》

西村直人@NAC

クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会・東京二輪車安全運転推進委員会指導員。日本イラストレーション協会(JILLA)監事。

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