マツダ『デミオ』のプロトタイプに試乗。ディーゼルモデルは期待以上の性能を持っていた。
日本ではディーゼルエンジンは大型車のもの、商用車のものというイメージが強かった。かつてはダイハツが『シャレード』に3気筒の1リットルディーゼルを用意していたこともあったが、メジャーとはならなかった。
そうしたなか、マツダは『CX-5』に2.2リットルのディーゼルターボエンジンを採用。続く『アテンザ』、『アクセラ』にも同様のエンジンを積み、市民権を得た。そしていよいよ小型ディーゼルの本命とも言える1.5リットルのディーゼルターボエンジンをデミオに積むこととなった。
デミオのディーゼルモデルはじつに気持ちの走りができるモデルに仕上がっていた。かつて、クルマはエンジン回転が天井知らずで回り、それにトルクが比例することが最高とされたことがある。しかし、これはマニアックなスポーツエンジン、レーシングエンジンでのこと(もちろんそうしたフィーリングが楽しいことは間違いない)で、普通に使うには低速からトルクがあったほうが圧倒的に楽だし、じつは速かったりもする。
デミオに搭載された1.5リットルディーゼルターボは、低速からしっかりと強いトルクを発生。デミオを楽で速いクルマとする原動力となっている。アクセルペダルをスッと踏む込むとエンジンはググッと回転を上げると同時に、力強く加速を始める。ガソリンエンジンとは明かに異なる低速から押し出されるような力強さがある。
デミオのディーゼルターボ(SKYACTIV-D)は、1500回転程度で最大トルクに達し、そのまま約3000回転までトルクを維持するので、6速MTの場合は3000回転程度でシフトアップしていくような乗り方がベスト。それ以上回してもフィーリング的には大きく落ちることなく、乗れてしまう。もちろん6速ATはベストなシフトアップポイントを選んでくれる。
ディーゼルのネガティブ面というと振動、騒音、黒煙などが気にされるところ。振動についてはアイドリング時に多少発生しているものの、さほど気になるほどではない。また、そのほかの部分についてはガソリンエンジンと比べて遜色はなし。
いいことずくめのデミオだが、大切なのは日本の消費者がこうしたクルマを認めて受け入れること。デミオのディーゼルが普通に受け入れられるようになれば、日本の自動車社会は一歩前に踏み出したことになるだろう。
今回は発売前のクルマで価格が発表されていないことから、オススメ度については未採点とした。
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。