【三菱 ミラージュ&トヨタ パッソ 300km試乗】“1リットル3気筒”という選択、登録車コンパクトの実力を探る…高山正寛

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三菱 ミラージュとトヨタ パッソ
三菱 ミラージュとトヨタ パッソ 全 38 枚 拡大写真

この4月にビッグマイナーチェンジを行ったトヨタ『パッソ』。内外装の意匠変更はもちろんだが、最大の変更点は、同社のハイブリッドカーにも採用されている技術を応用し、最大熱効率37%を実現した新開発の1リットル直3DOHCエンジンを搭載したことだ。元々パッソは販売の9割が1リットルモデル。ここに力を入れてくるのは当然のことだが、結果としてそれまでカタログ燃費トップだった三菱『ミラージュ』を抜き、JC08モードで27.6km/リットルというガソリンエンジン登録車としてはトップの燃費性能を達成した。

高速行きでは心もとないが一般道で光るドライバビリティ…パッソ

街乗りをメインに考えられているパッソではあるが、まずは高速道路をミラージュと比較走行してみた。ミラージュはN-WGNとの比較でも解説済みだが、空力ボディによる走行安定性の高さなどもこの価格帯のクルマとしては中々の実力を持っている。

一方、パッソのほうだが、正直高速道では少々心もとない。マイナーチェンジでも足回りには特に大きな変更点が入っているわけではないが、タイヤサイズは165/70R14から165/65R14に変更されている。昨今のエコカーは燃費を上げるために転がり抵抗の少ないエコタイヤだけでなく、空気圧も高めに設定されている。パッソやミラージュも同じ傾向だが、前後とも250kPaという数値は燃費には有効でも乗り心地や操縦安定性の面ではあまり有利には働かない。路面の追従性もそれほど高くなく、全体の乗り味は「粗い」印象がぬぐえない。

またパワステにも少し違和感を感じた。昨今は多くのクルマが燃費向上のため電動タイプを採用しているが、ミラージュはどちらかと言えば、油圧パワステ的というか、速度上昇に伴って操舵力も重めになる「普通」の味付け。一方パッソは街中重視のセッティングなのか速度の上昇に対し“操舵のしっかり感”が追いついてこない。つまり高速走行時のステアリングフィールがやや曖昧なのである。

ステージを一般道に移すとパッソもその良さが徐々に出てくる。元々インパネ上部が横方向にほぼフラットでシートもアップライトな着座姿勢、さらに前後スライド量の多さや上下45mmのアジャスターも付いているので小柄な女性でも十分な視界を確保できる。パワステは前述したように軽めなので街中での運転は楽だろう。ただひとつ気になったのが最小回転半径の大きさ、4.7mという数値は決して悪いものではないが、ミラージュが軽自動車を凌駕する4.4mという小回り性能を有していることからこの部分ではミラージュに軍配が上がる。

◆数値面の有利さが快適性にも効果…ミラージュ

シートに関しても両車のキャラクターは大きく異なる。パッソは元々ユーザーから支持が高かったベンチシートの設定を拡大。左右へのウォークスルーが可能な点はセパレートタイプのミラージュに比べると狭い駐車場などで助手席側から乗降できるなどのアドバンテージがある。但し、シート自体はいかにも平板(ベンチシートだからしょうがない、という声も聞こえてきそうだが)でコーナーリング時にもう少し身体をホールドしてくれると有難い。

また後席をチェックしてみると、乗降性も良く、ヘッドクリアランスはミラージュより余裕があり、前席シート下への足入れ性も悪くはないのだが、どうも落ち着かない。言い換えれば足元が狭いのである。アップライトには座れるのだが、シート座面の短さ、前席同様の平板的な作りも影響している。何よりミラージュのほうがホイールベースで10mm、室内長で40mm長いことが意外なまでに快適性に影響しているのである。

◆快適性では両車引き分け

快適装備に関しては99%UV(紫外線)をカットするガラスをフロントドアに採用するなど女性だけでなく、日焼け防止などにも効果がある装備が両車に採用されているのは嬉しい。

収納の多彩さではパッソに軍配があがるのだが、もう一つ気になる点を発見した。後席は両車とも6:4の分割可倒式シートを採用しているのだが、この6の比率を後席のどちら側に持ってくるかで使い勝手に大きな差が生じる。わかりやすく言うとパッソは運転席側が6、ミラージュは4なのである。つまりリアシートを倒し長尺物などを積む場合、パッソは後ろに2名乗車することが可能だが、ミラージュは1名しか乗ることができない。

これに関してはミラージュ自体の生い立ちによるものだろう。グローバルでの販売を視野に入れたミラージュだからこそ、全体のコストダウンは大きな命題となる。供給先の国に応じた仕様変更は当然行うが、リアシートの分割可倒機構までは最適化する余裕が無かったのかもしれない。確かにこの機構の使用頻度はそれほど高くはないだろう。それでも三菱自動車は日本のメーカーである以上、この部分も日本向けにしてほしい、というのが素直な気持ちである。

◆横滑り防止装置は両車とも標準装備だが、さらなる機能向上に期待

安全装備に関してはテスト走行の後、8月4日に一部改良が行われた。パッソも今回のマイナーチェンジで横滑り防止装置が標準装備化されたが、ミラージュも同様にこの機構に加えて、ヒルスタートアシスト、ブレーキアシストを全グレードに標準装備した点は素直に評価していいだろう。一方で両車ともSRSサイド&カーテンシールドエアバッグがまだメーカーオプションであるという点は正直悲しい。

さらに言わせてもらえば、今回テストしたホンダN-WGNには簡易型とはいえ「シティブレーキアクティブシステム(追突軽減ブレーキ)」やサイドエアバッグを「あんしんパッケージ」としてオプションではなく、売れ筋グレードに設定していることだ。この部分だけはとにかく早く対応しないと、ますます軽自動車にその座を脅かされることになる。

◆軽自動車にはない優位性もある1リットル登録車

最後に燃費性能だがミラージュ同様、テスト環境としては厳しい中、パッソは18.98km/リットル、e燃費の「カタログ燃費達成率」で言えば、68.76%とミラージュの79.7%には及ばないが、そこそこハードに走りっぱなしだったこともあり、自慢のアイドリングストップ機構もあまり出番が無かったことも大きい。

5名乗車が可能であることに加えて、燃費性能や取り回し性能も高い。そして両車とも環境対応車普及促進税制に適合(グレードによる)することで新車導入時の負担もかなり軽減される。一見“すき間”的に見える1リットルの登録車は実は非常に買い得な車種なのである。

《高山 正寛》

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