JAXA 光学地球観測衛星と光通信衛星をコラボ運用…2019年打ち上げを目指す

宇宙 テクノロジー
先進光学衛星のイメージ
先進光学衛星のイメージ 全 3 枚 拡大写真

2014年9月16日に文部科学省で開催された第17回宇宙開発利用部会において、JAXAは高解像度地球観測衛星と、静止軌道上で地球観測衛星光通信し、地上にデータを中継する衛星を連携させる構想を紹介した。共に平成31年度打ち上げを目指す。

平成27年度予算案に51億円の開発予算が盛り込まれたJAXA 宇宙航空研究開発機構の「先進光学衛星」は、分解能0.8~1m、観測幅50~70kmのハイレゾ光学地球観測衛星。2019年度(平成31年度)にH-IIAロケットでの打ち上げを目標とする。2006年に打ち上げられ、2011年に運用を終了した地球観測衛星「だいち(ALOS)」の光学センサーをさらに高分解能化し、1mを切る解像度を目指す。災害発生時に広域を迅速に観測できるよう、これまで日本国内で発生した災害の規模を踏まえて、50kmを越える観測幅とする。衛星質量は2トン級と比較的大型で、静止軌道上の衛星へ光でデータを送信する実証機器や防衛省が開発する赤外線センサーの実証機器を搭載。バッテリーや太陽電池パネルなど電源機器の長寿命化を図り、設計寿命は、これまでの5年よりも長く7年(目標は10年)だという。

海外の地球観測衛星は高解像度化が進んでおり、100kg級で分解能1mを達成している米スカイボックス・イメージング社の「SkySat」や、大型衛星で分解能0.31mを実現している米デジタルグローブ社の「WorldView-3」などがある。先進光学衛星は、こうした解像度の面で諸外国との競合を目指すのではなく、広域の観測を目標とするという。2機の衛星を合わせて観測幅60kmを実現する欧州の地球観測衛星「SPOT6」「SPOT7」や、分解能15mで観測幅185kmのアメリカの「LANDSAT 8」などと並ぶ広観測幅の性能とハイレゾ級分解能の両立が目標だ。1周回当たりの観測面積は、デジタルグローブの商用地球観測衛星「WorldView-2」(分解能0.45m)の20倍となるとしている。既存のハイレゾ衛星6~30機分に相当する。

こうした地球観測衛星の高精度化に伴い、データ容量もこれまでよりさらに増大する。そこで、静止軌道上で低軌道の周回衛星からのデータを光通信で受信し、地上に送信する役割を担うのが同じく2019年度打ち上げを目指す「光データ中継衛星」だ。2002年に打ち上げられて運用中の通信速度240MbpsのKa帯電波によるデータ中継衛星「こだま(DRTS)」と2005年に打ち上げられた光通信実験衛星「きらり(OICETS)」の技術を併せ持つ後継機と位置付けられる。打ち上げはH-IIAロケットで、運用期間は10~15年を検討している。

光データ中継衛星は、先進光学衛星など地球低軌道を周回する衛星と、レーザー光と電波(S帯、Ka帯)による衛星間通信を提供する。国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」の船外実験プラットフォームにも衛星光通信の実証機器を設置する予定だという。光通信では通信速度は1.8Gbpsに達し、周回衛星が地上局と電波で通信する際には1回に数分から十数分の通信時間となるのに対し、静止軌道との衛星間通信では約40分の通信時間を確保できる。低軌道の衛星から受け取ったデータは、筑波局や鳩山局などの地上局に電波で送信する。さらに、光通信の技術開発で連携するNICT 情報通信研究機構の光地上局との間で、光データ中継衛星と地上との光通信実証も行う。

光通信衛星は、大容量データ送受信に対応するだけでなく、通信機器が電波に比べて小型軽量というメリットもある。また、通信ビームが細いため、妨害や傍受が困難という特徴があるという。先進光学衛星と光データ中継衛星を同じ年度に打ち上げて組み合わせ、災害のリアルタイム・高分解能観測や高頻度での陸域、海域観測に利用するというのがJAXAの目指す姿だ。

《秋山 文野》

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