【フォード フィエスタ 試乗】スポーツカー顔負けのハンドリングに「もっとパワーが欲しくなる」…石井昌道

試乗記 輸入車
フォード・フィエスタ
フォード・フィエスタ 全 16 枚 拡大写真

その威風堂々とした顔つきからは、とてもBセグメントカーとは思えない『フィエスタ』。高速道路で後方から迫られたら、思わず道を譲ってしまいそうなほどだ。だが、単にエバりが効いているだけではなく、切れ長のシャープな目つきには生命感もあって愛着がわく存在でもある。

そんなスタイルの良さは、誰でもが一度はステアリングを握ってみたいと思わせるが、乗ってしまえばフォードの思う壺!? コンパクトカーなのに、こんなに乗り味がドッシリとしているだなんてと驚かされ、その魅力に抗いがたくなるのだ。

エンジンはフォードが誇るエコブーストで、いわゆるダウンサイジング・ターボ。排気量は小さく抑えて燃費を稼ぎつつ、ターボによってパフォーマンスを確保するコンセプトのユニットだ。なかでもフィエスタに搭載される1.0リットルエンジンは、排気量を小さくするだけではなく、3気筒のレスシリンダー化へも踏み込んでいる。一般的に1気筒あたりの排気量は大きいほうが熱効率がいいと言われる(燃費やパフォーマンスで有利)。小さいとピストンやシリンダーが触れている面積が大きくなり、熱損失が増えるからだ。同じ質量でも、小さく砕いたクラッシュアイスよりも大きな一塊の氷のほうが溶けるのが遅いという理屈からイメージできるだろう。そこでフォードは1.0リットルを開発するにあたって4気筒ではなく3気筒を選択したわけだ。

日本で3気筒エンジンと聞くと軽自動車用が主なので安っぽい音やフィーリングを想像しがちだが、フィエスタのそれはまったく違う。アクセルを踏み込んでいけば、少し高周波な、4気筒とは違う音質のサウンドが聞こえてくるが、決して安っぽくはなく、Bセグメントカーとしてはトップレベルの静粛性も備えている。

そして何より、1700rpmという低い回転域から1.6リットルNAエンジン以上となる170Nmのトルクを発揮するのが頼もしい。あからさまにターボのモリモリ感を強調するタイプではないが、発進直後から太いトルクでボディを引っ張りあげ、しかるべき速度域まで軽やかに到達させてくれるのである。低燃費を追求したエコカーであることを意識させられる場面はなく、アクセル操作と加速感が直結したファン・トゥ・ドライブをしっかり感じさせてくれるパワートレーンだ。

1.0リットルの小排気量ながら十分以上のパフォーマンスを見せてくれるフィエスタだが、シャシー性能はそれを上回っている。走り始めからドッシリとした重厚感があり、高速道路ではその特性を遺憾なく発揮して安定感たっぷりの走りを見せつける。これならロングドライブでも疲労が少なく、東京~名古屋ぐらいは涼しい顔でこなせてしまうだろう。

さらに圧巻なのがコーナーでの振る舞いだ。電子制御パワーステアリングながら、確かなフィードバックと少ないフリクションで良好なフィーリングを誇るステアリングを切り込んでいくと、ノーズはレスポンスが遅れることなく、かといって過敏でもないちょうどいい素直な感覚でインへ向いていく。スッと外側が沈み込んでいくロール感も自然で操っている実感が得やすい。粘り強さとのバランスも良く、路面が荒れていてもタイヤを食いつかせて狙ったラインを綺麗にトレースできる感覚が見事だ。ちょっとしたスポーツカーも顔負けなぐらいのハンドリング性能をみせるので、5ドアハッチバックの実用性は必要だが、走る歓びも満喫したいという人の贅沢な要望に応えてくれるだろう。

ここまでシャシー性能が高いと、もっとパワーがあってもいいという望みが頭に浮かんでくる。デザインのスポーティさも含め、ホットハッチも似合うモデルだからだ。それもユーザーの声次第!? フィエスタは日本でも予想を上回る人気となっているようなので、その実現も夢ではないだろう。かつては日本にも導入されていた、スポーツモデルのSTが復活することを期待したい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

石井昌道|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

《石井昌道》

石井昌道

石井昌道|モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストに。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイクレースなどモータースポーツへの参戦も豊富。ドライビングテクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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