選考の基準として重視したのは、そのクルマが登場したことの社会的意味と、移動の歓びをもたらしてくれるかどうか。他の方々よりも前者の比率が高いかもしれない。もちろん多くのユーザーにとって手の届きやすいことも大切だと考えているので、高級車やスポーツカーは不利になる。
『デミオ』を満点としたのは、2つの要素を高次元で両立したからである。ひと目見ただけで走りたいという気持ちにさせる躍動的なフォルムを5ナンバー枠内で実現し、運転席に座るとドライビングへと誘う空間作りに引き込まれる。
新開発の1.5リットル・クリーンディーゼルエンジンは、力強い加速感とハイブリッドカーに迫る環境性能を両立。デザインも走りも多くの国産コンパクトカーとは別次元にある。ここまで完成度が高く、なおかつ自動車としての魅力に満ちたクルマを、お求めやすい価格で送り出したことに賞賛を送りたい。
それにしても軽自動車とミニバンに対するこの業界の評価の低さには愕然とする。ユーザーとジャーナリストの距離が広まりつつあることに危惧を覚える。
マツダ『デミオ』:10点
スズキ『ハスラー』:7点
プジョー『308』:3点
トヨタ『ヴォクシー/ノア』:3点
BMW『i3』2点
森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得 意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。また自動車以外の交通 事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。