原付1種の国内新車市場は2003年の約54万台規模から年々減少傾向にあるものの、2013年では約23万9000台の市場規模がある。
地方部の高校では、通学に原付1種の使用を認めている学校も多く、ホンダ開発陣は若者が使用するそういった背景をしっかり把握し『ダンク』をリリースした。
開発者は「若者層を中心に、通学の環境やスクーターに求めるさまざまな要望を徹底的にリサーチしてまいりました。既存のスクーターにはない新しいスタイリングや、力強く環境性能にも優れた新開発のエンジンを開発するなど、若い人たちを中心に幅広い方々に受け入れられるスクーターに仕上げることができました」と言い切る。
プレーンな面構成とソリッドなカタマリ感、たしかにデザインはイマドキだ。これまでの「若者向き」というと、スピード感を表現しようとスポイラーなどを装備していたが、それは時代遅れだということに開発段階で気づいている。
走りも機敏。アイドリングストップ・システムを標準搭載した「eSPエンジン」は、坂道でもパワフルだし、平地での出足の良さも50ccとは思えぬほど。
ライディングポジションもゆったりとしていて、シートや足もとのフロアが広く、座面や足の位置の自由度が確保されているのも嬉しい。テールエンドまでシートをフラットにしたのは、学生たちがカバンをたすき掛けや背負って持つのを見たからだと開発者が教えてくれたが、そのとおり、腰の後ろにカバンがちょうど収まって走りやすい。
グローブボックスにはアクセサリーソケットを備え、スマートフォンなどの充電に便利だし、フロントインナーラックには学生に人気の500mlの紙パック飲料がちょうど入る。
アルミキャストホイールで質感を高めた前後ホイールやLEDテールランプなど、大人が触っても満足のできる高級感を持ち合わせ、休日にはお父さんの買い物にもフル稼働しそうだ。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
快適性:★★★★
オススメ度:★★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のモーターサイクルカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説している。現在、多くのバイク専門誌、一般誌、WEB媒体で活動中。