マツダは『アテンザ』および『CX-5』の大幅改良モデルを、1月7日より発売する。先日開催された試乗会では、いくつかのパートについて、エンジニアやデザイナーが専門的なプレゼンテーションを行った。
そのひとつ、ドライビングダイナミクスについての時間で、まずスクリーンに映し出されたのは、「人馬一体」だった。初代『ロードスター』の登場時にひんぱんに使われたフレーズだったので、ロードスターのコンセプトワードかと思っていたら、マツダのクルマ作りに一貫する考え方だった。
車両システム開発部操安性能開発部の老川隆氏が、そのあたりを解説してくれた。
「人馬一体には3つの要素があります。安全安心、走る歓び、充実感に満ちた生活、です。今回はそこに上質感をプラスしようと考えました。そのためにサスペンションをしなやかに動かし、連続的なクルマの動きと上質な乗り心地を目指しました」。
具体的には、フロントサスペンションのロアアームのブッシュを変更し、ダンパーは微低速域のフリクションを減らした。アテンザではイニシャルバルブ形状も一新している。一方のCX-5ではスプリング形状や、それを支えるシートの形状を変えてまで、動きのスムーズネスを追求した。
「リアはダンパーのピストン径を25mmから30mmにアップすることで、路面からの突き上げを丸めました。フリクションコントロールデバイスも採用しました。これは『デミオ』で初投入したものを継承しています」(老川氏)。
アテンザでは4WD追加もトピックだ。ここでも苦労があった。センタートンネルに後輪駆動用ドライブシャフトを入れようとすると、トンネルを塞ぐように装着するメンバーの幅が限られてしまう。そのまま削れば剛性が落ち振動が出る。そこで1枚ものだったメンバーを2枚張り合わせとして目標を達成したそうだ。
「開発は一般道でも行っています。ドイツではアウトバーンから田舎道まで走りましたし、研究所がある横浜でも首都高速道路の継ぎ目や国道15号線の荒れた舗装は評価基準になりました。公道での印象を広島に持ち帰って、熟成に役立てました」(老川氏)。
いつもの道をなにげなく流していても気持ちいい。そう感じさせる新世代マツダ車の走りは、細かい部分まで手を抜かず、公道での印象を大切にする開発姿勢の賜物なのだと痛感した。