【スズキ アルト 試乗】軽さ活きる「AGS」をもっと表舞台に…青山尚暉

試乗記 国産車
スズキ アルト F
スズキ アルト F 全 11 枚 拡大写真

新型『アルト』の裏ハイライトと呼べるのが、ベースグレードFにのみ搭載されるAGS(5速オートギヤシフト)である。5MTにアクチュエーターを付加しただけの軽量かつシンプルな構造だ。

【画像全11枚】

同種のミッションとしてはVW『up!』の5速ASG、プジョー『208』などの5速ETGがあるが、決して洗練されたミッション、変速の持ち主とは言い難い。AT、マニュアルモードのどちらでもけっこうギクシャクする。

しかしAGSはさすが先代4ATの代わりを担うミッションという位置付けだけあり、1-2速のみクセはあるものの、アクセルオフでシフトアップさせる、MT車同様のコツをつかめば実にスムーズに、自然に変速してくれるのだ。さすが日本の技術、と言わざるを得ない。

ギヤセレクターレバーを左に倒せばMTのようなマニュアルシフトも可能。手前に引くとシフトアップする方式で、シフトダウン方向は自動。減速していくと5-4-3-2-1と落ちていく。クリープ、坂道での2秒後退ホールド機構も備わるから、2ペダルのATと同様の感覚で乗れるのも魅力だ(AT限定免許でOK)。

ところで、FF/CVT車の37.0km/リットルに対して、FF/AGS車が29.6km/リットルになるのは、ミッション部分の燃費差とともに、最廉価モデルゆえエネチャージ、アイドリングストップが付かないことによる。

FグレードのAGSモデルで走りだせば、乗り心地は13インチタイヤの空気圧が280kPaも入っているにもかかわらず(一般的には220~240kPa)、実にしっかり快適。先代13インチタイヤ装着車で見られた、ステアリングを切るとぐにゃぐにゃする挙動も影を潜めている。低重心パッケージによる安定感の高さ、カーブでの自然なロール感も褒められる。

そうそう、新型アルトは軽量化による走りの「軽さ感」が売りだが、CVTモデルで感じにくかったそれがこのFグレード、AGS車ではちゃんと伝わってくる。出足から中間加速まで、軽やかにスイスイ走る。

ちなみにパッケージングは前席優先の考え方。荷室奥行きは先代の480mmに対して400mmに。そのおかげもあって、後席膝回り空間が身長172cmのドライバー基準で驚愕の430mmと、LLクラスミニバンのエルグランド並みになっているわけだ。荷室容量より後席居住空間を優先したのは、軽セダンとしては正しい方向性ではないか。

バックドア部分を寝かせたことで得られたのはスタイリッシュさためだけではない。結果としてヒンジが前側になり、開口時のバックドアの張り出しが少なくて済むメリットが生まれる。

最後にこれだけは言いたい。AGSが現時点でアウトサイドミラーやエアコンが手動、エネチャージ、アイドリングストップ、後席ヘッドレストも付かない、一般ユーザーが買いにくい廉価版Fグレードにしか組み合わされないのは非常に残念だ。欧州コンパクトカーでは主流のミッションだけに、普通に乗れる、買えるグレードにも設定してほしいと思う。3月に発売されるという、マイクロホットハッチ!?と言える「アルトRSターボ」はAGSと組み合わされるぐらいで、出来が良く、決して廉価版専用ミッションではないからだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
ペットフレンドリー度:★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。現在、犬との自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーとしての活動も広げている。

《青山尚暉》

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