タイヤ空気圧管理で事故防止…物流の問題を解決する「TPMS」とは?

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オレンジ・ジャパンのTPMS(センサー装着例)
オレンジ・ジャパンのTPMS(センサー装着例) 全 12 枚 拡大写真

自動車向けケミカル商品を扱うソフト99コーポレーション。2月3日から6日まで開催されている同社のスプリングフェアでは「ガラコ」や「フクピカ」などのメジャー商品の新製品のほか、グループ会社の製品も紹介されていた。同社には様々なグループ会社が存在し、その中の1つに「オレンジ・ジャパン」という会社がある。2011年設立の新しい会社ではあるが、同社の取り組みが日本の物流業界が抱える問題を解決しようとしている。

◆空気圧と温度管理で事故を未然に防ぐ

オレンジ・ジャパンが取り扱うのは「TPMS(タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム)」と呼ばれるタイヤの空気圧と内部温度を測定、モニターに表示する商品。アメリカでは、空気圧の低下が原因の事故により安全規制の法案が2000年に可決。空気圧をモニタリングし、圧が低下した場合は警告を発するシステムの装着が義務化された。残念ながら日本においてTPMSの認知度は低く、一部のスポーツカーへの導入は始まっているものの、一般にはあまり浸透していないのが現状だ。

システムは、空気圧と内部温度を測定するセンサーがタイヤバルブに付いており、受信機で読み取る仕組み。読み取られた信号をモニターに表示する。では、なぜTPMSが物流業界を救うのだろうか。

物流業界は現在、深刻なドライバー不足に悩まされている。熟年のドライバーが辞め、自動車の知識があまりない若年ドライバーに依存するケースが多くなってきているのだ。ドライバーの中には、「バッテリーが上がったため下げるのにはどうしたらいいか」と基礎的なことを聞く人も中にはいるという。そのようなドライバーに対し、運行前の安全確認だけでトラブルを防ぐことは難しく、運行を管理する側としては事故の芽を事前に摘むことが求められる。精密機器を輸送する場合、一度事故を起こせばその補償費用は莫大だ。TPMSを導入することで、目視ではわからないようなタイヤの小さな異変を可視化、事故を未然に防ぐことに繋がるという。

オレンジ・ジャパン営業部の塗谷真治氏は「高速道路でのバーストも怖いですが、一番怖いのはゆっくりと空気が抜けるスローパンクチャー。まっすぐ走っている分には気付かず、カーブでいきなりスピンし大事故につながってしまう」と話す。

空気圧の他に、タイヤ内部の温度もチェックできるため、ブレーキの引きずりやハブのガタによる異常過熱で車両火災に繋がるケースも防げるという。塗谷氏によると「今までは整備士の方などにしか知られていないシステムだったが、最近では事業トップから問い合わせが多くなってきている」とのこと。その背景にあるのは、国土交通省が出した車両火災への注意勧告だ。空気圧だけでなく、温度をチェックしたいというニーズが非常に大きいと塗谷氏は述べる。

◆コスト削減・ドライバーの負担軽減という副次効果、クラウドとも連携

最近はその価格が落ち着いたとはいえ、燃料費も運送会社の運営に重くのしかかる。TPMSの導入で空気圧を適正に保ち、安全だけでなく燃料コストの削減にもつながるが、塗谷氏によるとメンテナンスの負担軽減にもつながるという。

「燃料費だけでなく、1台あたり30分以上もかかっていた運行前点検が、モニターをチェックするだけになるため時間短縮につながる。今までの運行前点検では用紙にレ点を入れているだけの曖昧なチェックも多く、このシステムではきちんとした数字で管理ができる」(塗谷氏)

さらに塗谷氏は「トラックを降りたときには気付かなくても次走ろうとしたときに空気が抜けていて、輸送遅延が発生してしまうケースもある。大きな事業者の場合、数百台のトラックを管理者が全てをチェックするのは不可能。その場合、管理をドライバーに委ねないといけないので、管理ツールとしての導入が広がっている」と話す。

同社のシステムでは、車載端末(デジタコ)とクラウドで連携をすることで、トラックの走行データと共に空気圧・温度記録ができるため、異常があった際には管理者がリアルタイムで状況を把握できるのも特徴だ。

ドライバーは管理と聞くと手間が増えてしまい嫌悪感を抱く人間も多いが、塗谷氏は「自分の身を守るもの」と強調する。トラックはダブルタイヤを使用している場合が多く、エアゲージでの空気圧測定は労力がいる。TPMSを導入することで、屈んだり覗き込んだりといった体への負担も減らすことができる。

◆クルマの知識が少ない人こその必要なシステム

同社の製品はモータースポーツの現場でも使用されており、TPMSはスポーツ走行を楽しむ一部のドライバーには浸透してきている。しかし塗谷氏は、クルマの知識が少ない人こそ本当に必要なシステムと訴える。

「安全の観点から、実際はクルマを知らない方に付けていただけなければならない。女性やお年寄りでなかなか管理ができないような人に装着していただくというのが、我々本来の目的」(塗谷氏)

同社の製品の電池寿命は乗用車で3~4年、トラック向けの製品では、24時間走り続けるような使い方をしても2年は持つという。塗谷氏は「タイヤ交換のタイミングや新車成約時に取り付けていただくと導入のハードルは低い」と話した。

《橋本 隆志》

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