【キャデラック CTSプレミアム 試乗】スポーツ性と快適性のバランスに、「安定」を加えたオンデマンドAWD…山崎元裕

試乗記 輸入車
キャデラック CTSプレミアム
キャデラック CTSプレミアム 全 20 枚 拡大写真

日本仕様のキャデラック『CTS』。その2015年モデルで最も大きなトピックスといえるのは、やはり新規導入のトップモデル、「プレミアム」だろう。搭載エンジンは、いわゆるダウンサイジングのコンセプトによる、2リットル直列4気筒ターボ。最高出力&最大トルクは、276ps&400Nmとされ、これに6速ATを組み合わせる。

プレミアム独自の特長は、駆動方式をオンデマンドAWDとしていること。これは通常時には後輪のみを駆動。そして必要時には、電子制御多板クラッチによって、瞬時に駆動力を前輪へと送り、それによって最適な前後トルク配分を実現するシステムだ。今回の試乗会が積雪のある長野県の軽井沢で行われたのも、ここにその目的があった。

いまだに古典的な価値観からは抜け出せないのか、キャデラックのエンブレムを掲げるモデルが、直列4気筒エンジンで走るようになったことは、個人的にはやはり少なからずの抵抗感もある。けれども実際にこのCTSプレミアムのステアリングを握り、その走りを体験してみると、小排気量ターボエンジンが、いかに効率的なものであるのかに感動させられる。

ボディーは全長×全幅×全高で4970×1840×1465mm。車両重量は1770kgというのがCTSプレミアムのサイズだが、この数字を意識させない軽快な加速に、まずは圧倒されてしまう。燃費性能も、コンバインド=総合燃費で約11.0km/リットルを達成。もはや直列4気筒に対しての、V型8気筒の優位性は、滑らかさにしか求めることはできないというのか。

オンデマンドAWDの制御は実に素晴らしいものだった。雪上でのドライブでは、ドライ路面で起きていることと同じことが、それよりも相当に低い速度で体験できるから、この印象はさらに強いものになる。もちろんオンデマンドAWDの機能などは、実際にそれを感じることなどは不可能で、どのようなアクセルやステアリングの操作を行ったとしても、車体は常に安定方向に導かれているのだという結果から、その魅力を語るほかはない。

それにしても素晴らしい安定感だ。ハンドリングも基本的にはニュートラルな印象を崩さないし、さらにセンターコンソール上のスイッチで、「ツーリング」、「スポーツ」、「スノー」と、走行モードを変化させていけば、マグネティック・ライド・コントロールを採用したダンパーの特性やステアリングのアシスト量、アクセルレスポンス、シフトプログラムなどが統合的に制御されるから、その変化を楽しむこともできる。

CTSが、BMWの『5シリーズ』を直接のベンチマークとした、魅力的なフットワークを持っていることは、すでにこれまでのモデルでも実証済みだ。さらにメルセデスベンツ『Eクラス』、アウディ『A6』といったヨーロッパのライバルと比較しても、キャデラックCTSの走りは、スポーツ性と快適性のバランスというものが、最も良く実現されているように感じる。キャデラック自身がよく、Bold=力強く、Sophisticated=洗練された、といった言葉で表現するエクステリアデザインも、カスタマーをより刺激するという意味では、大きな魅力となりそうだ。

安全装備もさらに充実し、またiPhoneのワイヤレス充電を可能にするなど、装備面での話題も多い、2015年モデルのキャデラックCTS。ここでレポートしたトップモデルのプレミアムでも699万円(消費税8%込み)というプライスには、かなりの説得力があるのではないか。もちろん今後に望むものは、より日本市場を意識した、右ハンドル仕様ということになるのだろうが。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

山崎元裕|モーター・ジャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
1963年新潟市生まれ、青山学院大学理工学部機械工学科卒業。少年期にスーパーカーブームの洗礼を受け、大学で機械工学を学ぶことを決意。自動車雑誌編 集部を経て、モーター・ジャーナリストとして独立する。現在でも、最も熱くなれるのは、スーパーカー&プレミアムカーの世界。それらのニューモデルが誕生 するモーターショーという場所は、必ず自分自身で取材したいという徹底したポリシーを持つ。

《山崎 元裕》

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