【マツダ CX-3 プロトタイプ 公開】ディーゼル特有の“あの音”を打ち消す新発明

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マツダ CX-3 プロトタイプ
マツダ CX-3 プロトタイプ 全 19 枚 拡大写真

マツダ『CX-3』に搭載されるパワーユニットは『デミオ』で初採用された1.5リットル直4DOHCディーゼルターボ、いわゆる「SKYACTIV-D」である。デミオに搭載された段階でも高い評価を受けていた同ユニットだが、マツダはすでに「次の一手」を打っていた。

それが新採用の「ナチュラル・サウンド・スムーザー」と呼ばれる画期的とも言える新機構なのだ。その秘密を探るべく、同社のパワートレイン開発本部パワートレイン企画部主幹の新畑耕一氏に話を聞いた。

◆ノック音の原因を徹底的に探る

「CX-3用のSKYACTIV-D 1.5は型式こそデミオと同じですが、環境性能を始め元々持っている高い性能に対し、制御を変えることで最大トルクをデミオより20Nm向上させています」。(新畑氏)

しかし、CX-3用SKYACTIV-D最大のキモはそこだけではない。

「実は『これガソリンエンジン?』と思わせることが最大の狙いだったのです」(新畑氏)。

ディーゼルエンジンと言えばどうしても付きまとうのがあの「カラカラ」というノッキング時に発生する音だ。1.5リットルだけではなく、『アテンザ』や『CX-5』などに搭載されている2.2リットル版も従来のディーゼルの概念を変えるくらい、静粛性に関しては一定以上の結果を出しているのだが…。

「もう少しノック音を減らしたかった。特にクルマの発進直後は周りが静かなのでどうしてもその部分が気になります。このネガティブな音を減らすためにエンジンをエターナル系(シリンダーヘッドやブロックなどの動かない部分)とインターナル系(ピストンやコンロッドの可動部分)とに分けてエンジンノイズを分析した結果、エンジン近接音の3.5kHz前後にピークがあることがわかりました」(新畑氏)。

新畑氏によれば前述したインターナル系にその原因があることはある程度の仮説を立ててはいたという。「ピストンとコンロッドのどこかにピークがあることは予想していましたが、最新の解析技術を用いることでピストンを質量、コンロッドをバネとする上下伸縮運動、これによって発生する“共振”がその原因であることをつきとめたのです」。

それを解消するために開発されたのが今回のナチュラル・サウンド・スムーザーというわけだが、いわゆる原理は逆位相になる構造体(動吸振器、ダイナミックダンパーとも呼ばれる)を組み込むことで共振を減衰させるという理論としてはシンプルなものだ。

「おっしゃる通り、理論はそうかもしれません。しかし常に5000回転以上で上下に動くピストン周りのどこにそれを装着させるか、という問題があります。そこで気が付いたのがピストンピンでした。最近はマツダも含め、多くのピストンピンには穴が開いています。ならばここに動吸振器を入れればいいのではないかという考えです」(新畑氏)。

◆差は歴然、信頼性の追求も忘れずに

こうして開発されたナチュラル・サウンド・スムーザーはピストンピンの中に圧入する非常に小さなパーツだ。材質はスチールで中心部をピストンピンに固定、その両サイドにバネとなる部分があり、ピストンの上下運動に応じてさらに外側の部分にある質量が逆位相に動くことで共振を減衰するという。

「詳細な寸法も含め、コンピューターによる計算を繰り返し、諸元を決めました」(新畑氏)。

また取材現場にはこの効果を体感できるシミュレーション音源が用意されていた。新畑氏いわく「実車よりはわかりずらいかも」とのことだったが、効果は誰にでもわかるほど絶大だ。何よりも加速時のエンジン音の“その奥”から聴こえてくる「バラバラ」という音が消え、驚くほどスッキリとした音色になっているのである。

実は取材時に撮影した車両にこの機構は装着されていなかったのだが、それでも「随分音は静かになっている」と感じた。この新機構の搭載でどれだけノック音が改善されるのかと予想するだけでも十分期待できる。

「実際、車両に装着すればもっと音は静かに感じるはずです。試験値でも最大10dBの改善がされています」(新畑氏)。

最後に少し意地悪な質問を投げかけてみた。この小さなパーツの耐久性についてである。

これについて新畑氏は「よく聞いてくれました(笑)。ナチュラルサウンドスムーザーは音を下げるためのパーツですが、音のためにかけた開発時間より信頼性確保のためにかけた開発時間のほうがはるかに長いのです」と答えた。

ナチュラル・サウンド・スムーザーはCX-3のXD Touring以上のAT車にメーカーオプションされるという。今回の取材で感じたのは同社がSKYACTIV技術導入時に提言した“The sky is the limit”(無限の可能性)という言葉である。ディーゼルエンジンのネガを根本から解決しようという貪欲なまでの技術革新へのこだわりこそが現在のマツダの好調を支えているのであろう。

《高山 正寛》

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