【三菱 4WDモデル 雪上試乗】圧倒的な駆動力のパジェロ、モード切替がカギのデリカ…斎藤聡

自動車 ビジネス 国内マーケット
三菱 パジェロ
三菱 パジェロ 全 22 枚 拡大写真

三菱自動車は様々な4WD方式を有している。1953年に三菱『ジープ』の生産が始まったのを起点に、『パジェロ』、『デリカ』、といったクロカン色の強い4WD、1980年代に登場した『ギャラン』(VR4)や『ランサー』など乗用車用ハイパフォーマンス4WD、『アウトランダー』などクロスオーバー向け4WD、軽自動車用オンデマンド4WDなど、車系ごとに適した4WDシステムを開発し、現在では8タイプを持つ。

今回北海道にて、この8タイプのうち、ランエボ用2タイプと軽自動車用オンデマンド4WD、トライトン用イージーセレクト4WDを除く4タイプの4WDモデルに特設雪上コースで試乗することができた。

一口に4WDといってもその用途によって機能、使い勝手、パフォーマンスが大きく違うことが体感できたので、搭載車種やシステムの違いにも触れながら詳しく紹介してみたい。まずはパジェロとデリカについて。

◆強力なトラクション性能と機動性を両立…パジェロ

パジェロに搭載される4WDは、「スーパーセレクト4WD-II」。このシステムは、4×4用(ヘビーデューティなオフロード4WD)パートタイム4WDであるから進化したもので、エンジンの出力は複変速機でLO/HIに切り替えられるようになっていて、さらにセンターデフで基本前後駆動力配分が33対67にトルク配分されている。このセンターデフには、並列にビスカスカップリング式のLSDと直結機構が取り付けられている。また、センターデフとフロントデフの間に電動式の2WD/4WD切替機構がついている。その結果、走行中に後輪駆動、4WD(4H)、センターデフロックモードのHi(4HLc)、LO(4LLc)を選ぶことができる。

さて、そのパフォーマンスだが、どんな路面でもタイヤがしっかりと捉え軽々と走ってくれる。特にセンターデフをフリーにした状態(4H)では、前輪への駆動配分が少なくなるためそれだけハンドルの効きがよく(駆動トルクで旋回グリップ力が奪われる率が少ないため)強力なトラクション性能を持っているのに滑りやすい路面でスイスイ曲がってくれる印象。

センターデフをロック(4HLc/4LLc)にすると、駆動配分は事実上ほぼ50対50となる。ドシッとした安定感が増し、圧雪路でも安心感が高まる。悪路で接地性の悪い路面でもグイグイ走る走破性を発揮する一方、カーブではコーナリングブレーキング現象(前輪と後輪の回転差が生じないため起こる現象)によって曲がりにくくなる。そんな場合は複変速機のセレクターを4Hにしてやると、ブレーキング現象が解消されするりとカーブを曲がることができる。

改めてパジェロに乗ると、運転のしやすさを実感するとともに、4×4に迫る圧倒的な駆動力を持っていることがわかった。

◆3モードの切り替えでスムーズな走りを実現…デリカ

一方、デリカは、1990年代までスペースギアと呼ばれクロカン4WD的な色彩を強く持っているミニバンだった。『デリカD:5』になってそのクロカン4WD的な色彩を抑えたのに合わせて、システムも「電子制御4WD」となった。

このシステムはFFベースの4WD用に開発されたもので、リヤデフの直前に電子制御式の多板クラッチを配置。これを断続することでリヤタイヤへの駆動力を配分するシステムだ。室内にはダイヤル式のドライブモード切り替えスイッチがあり、4WD ECO、4WD AUTO、4WD LOCKの3つのモードが選べるようになっている。4WD ECOは燃費に配慮したモードで、通常は2WD、滑りやすい路面状況になると4WDとなる。4WD AUTOはドライ、雨、雪、様々な状況で4WDとなる。電子制御カップリングによって4WDの後輪へのトルク伝達力をコントロールすることで、スムーズなドライブが可能。4WD LOCKは、後輪へのトルク配分量を高め、悪路走破性やスタックからの脱出性能を高める。

ECOではほぼFFで、前輪がホイールスピンすると後輪にトルクを伝えるもので、印象としてはアシスト4WD的なもの。4WDの実力は、やはりAUTOかLOCKで発揮される。AUTOはスムーズに発進し滑らかに曲がってくれる滑りやすい路面でのイージードライブモード。シャーベットのような路面に足を踏み入れアクセルを強く踏み込むとリヤタイヤに急いで駆動トルクを伝えようとするためかギクシャクしたトルクの断続ショックが出ることがあるが、このシンプルなシステムと走りやすさを考えれば無視していい。

路面の滑り具合が安定しないところや超悪路はLOCKが良い。限りなく50対50に近いトルク配分で、トラクション性能はクロカン4WDに迫る。深いシャーベット状の悪路を走った際も、わだちで左右に多少足を取られながらもグイグイ前に進んでいく強力なトラクションが心強かった。

じつはこのほかに1.2リットルに排気量アップされたミラージュ(FF)にも試乗することができた。サスペンションのセッティングが変更され、フロントサスペンションにスタビライザーを装備。タイヤも15インチにインチアップされた。軽さとボディの意外に高い剛性(感)、腰の強さが加わった足回りのためか、雪道での走りが意外なほど良かった。一般道でもその感覚は味わえるだろう。

《斎藤聡》

斎藤聡

特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  3. 船上で水素を製造できる「エナジー・オブザーバー」が9年間の航海へ
  4. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る