【トヨタ アルファード / ヴェルファイア 試乗】2列目席のすべてを試してみた、ベストシートは?…青山尚暉

試乗記 国産車
トヨタ ヴェルファイア
トヨタ ヴェルファイア 全 14 枚 拡大写真

大空間高級サルーンを謳う新型『アルファード』&『ヴェルファイア』は新たにかつてないミニバンの居住空間を実現する超豪華な2列目席エグゼクティブラウンジを設定した。

エグゼクティブラウンジはHVと3.5リットルモデルに組み合わされ、その車両価格はHVで700万円オーバー、3.5リットルモデルで650万円オーバーと超高価だ。

が、先代最上級のエグゼクティブパワーシートに対してひじ掛けを含む“シート総幅”を100mm拡大したエグゼクティブラウンジシートは、セミアリニンの本革仕様であると同時に、素晴らしく滑らかに作動する格納式ウッド張りテーブル、パワーオットマン、アームレスト格納式集中コントロールリモコン、ファイルホルダー、高級感ある金属加飾、LEDパーソナルランプ、天井LEDイルミネーション、携帯&スマートフォンホルダー、カップホルダー、AC100Vコンセント、そしてSDナビゲーション+JBLプレミアムサウンドシステム、後席用12.1インチモニターなどを標準装備。

さながら真に航空機のアッパークラスのぜいたくさ、装備機能を味わうことができ、大空間高級サルーンとしてその価格もやむをえないと思わせる。

それだけに世界のVIPを空港でお出迎えするのにこれ以上の移動手段はないと思える。室内高は1400mmもあり頭上空間がたっぷりしているから、例えばレディ・ガガが奇抜な帽子をかぶって来日しても、脱がずに移動でき、大喜びしたりして…。

シートサイズはクッション長510mm、クッション幅520mm(1脚)。スライド量は最大460mm、シートバック高620mm。リクライニング角度はほぼフラットになる179度である。身長172cmのドライバーのドライビングポジション基準(以下、同)のニースペースは最大460mm。2-3列目席スルーは不可である。

かけ心地は極上だ。シート表皮のクッション感が柔らかく、ふんわり包まれ、じんわり沈み込む上質な着座感に、自分が社長、VIPになった気分にしてくれるほどである。エグゼクティブラウンジ仕様は足回りも専用にチューニングされ、乗り心地を重視しているから乗り心地自体の快適度も抜群というわけだ。

より現実的な2列目席のバリエーションとして上位に位置するのがエグゼクテイブパワーシートだ。座面両側に固定されたひじ掛けがあり、リクライニングとオットマンは電動。シート間には木目調加飾が施された折り畳み式テーブルが備わる。本革シートを選べばAC100コンセントも用意される豪華さだ。

シートサイズはクッション長525mm、クッション幅505mm(1脚)、シートバック高645mm。スライド量は最大500mm、リクライニング角度は179度とほぼフラットになるのはエグゼクティブラウンジ同様だ。ニースペースは最大510mm、2-3列目席スルー空間は145mmである。

かけ心地はひじ掛け部分の高級な造りの裏返しとも言えるちょっとした窮屈感と、路面によってその部分の微振動が気になると言えば気になるものの、文句なくぜいたくな居心地を提供してくれることは間違いない。

実は上記の2種類のシートは、先代2列目席キャプテンシートの弱点だったシート全体のブルブルした微振動を低減するため、シートバックに内蔵されたダイナミックダンパーをこれまでの1つから2つに増強。より幅広い周波数の振動減衰に対応している。ちなみになんでキャプテンシートにブルブル感が出てしまうのかと言えば、フラットフロア、ロングスライドのためのレール、重いシートの支持部分の剛性不足ゆえである。だから本当の特等席はそれを感じにくい前席かもしれない…。

おそらく販売面でメインになると思われるのが標準的グレードに組み合わされるリラックスキャプテンシートだろう。比較的硬めのシート表皮、クッション性を持つものの、背中の包まれ感は先代以上。また、このシートのみの機能として、シートを中寄せしてリヤホイールハウスを避け、先代の800mmに対して830mmものロングスライドが可能。結果、ニースペースに最大870mmもの余裕がある(先代は800mm。それでも広すぎ!)。もっともシートを中寄せすると、2脚のシートがぴったりくっついた感じになり、微振動の伝わり方も先代よりは低まったものの、0ではない…という印象だった。

シートサイズはクッション長510mm、クッション幅510mm(1脚)、シートバック高620mm。リクライニング角度は173度。これでも熟睡できる!?角度ではある。折り畳みテーブルを畳んだ状態の2-3列目席スルー空間は100mmと、先代の165mmより狭くなった。

最後は8人乗りとなるベンチシートである。見た目、着座感の高級感、ぜいたくさはないが、メリットとしては、幼児を乗せたときにケアしやすく、大人がダラッと姿勢を崩して乗車でき、2-3列目席フルフラット化したときにすき間がなく、完全なお座敷感覚になること、そして3列目席をハネ上げ格納しても5人乗車できる点だ。また、キャプテンシートよりシート重量が軽く、荒れた路面などでの微振動がもっとも気にならないのがこのベンチシートである。シートサイドのたわみが大きく、小柄な人、高齢者でもスルリと腰を滑らせた降車することができるのもうれしい。

スライド量は720mm。ニースペースは最大460mm。シートサイズはクッション長490mm、クッション幅1400mm、シートバック高600mm。リクライニング角度は173度である。

ここまで4タイプの2列目席すべてに試乗した印象、各シートのプロフィルをお伝えしてきたが、かけ心地はエグゼクティブラウンジ>エグゼクテイブパワーシート>リラックスキャプテンシート&ベンチシートの順にいい(値段に準じている?)。

子育て真っ盛りのユーザー、どうしても最大8人乗れないとダメという人を除き、アルファード&ヴェルファイアの大空間高級サルーンの特等席としてふさわしいのはキャプテンシートだと思う。あとは予算で選べばいいだけだ。

もし、アウトドアでクルマを停め、2列目席足元フロアに座布団でも敷いてお座敷感覚を楽しみたい、大型犬をくつろがせたい…というなら、2列目席足元のフラットフロアがもっと広々しているリラックスキャプテンシートがお薦めだ。

※文中の数値はすべて実測値で、多少の誤差があります。

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。現在、ドッグライフプロデューサーとしての活動も広げている。

《青山尚暉》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. BEVを2年間所有した、“リアルな”ランニングコストを大公開
  2. ベントレーの超高級住宅、最上階は「55億円」 クルマで61階の自宅まで
  3. メルセデスベンツの万能車『ウニモグ』がキャンピングカーに! 数日間の自給自足が可能
  4. 【ダイハツ ムーヴ 新型】「ポッキー入れ」にイルミネーション、軽自動車でも質感を“あきらめさせない”インテリアとは
  5. 日産の新型セダン『N7』、発売50日で受注2万台を突破
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  2. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  5. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
ランキングをもっと見る