【スズキ SX4 S-クロス 試乗】進化論を地で行く2代目…中村孝仁

試乗記 国産車
スズキ SX4 S-クロス
スズキ SX4 S-クロス 全 8 枚 拡大写真

果たしてこれを2代目と呼んでよいものか疑問を感じてしまうが、先代『SX4』の市場を受け継ぐという点では間違いなく2代目だ。

新しい『SX4 S-クロス』は、先代SX4に対し、全長で150mm、ホイールベースで100mm、全幅で35mm、全高で5mmそれぞれ拡大している。かなり大型化した印象があると思うのだが、これだけ大きくなって重量は50kgもの軽量化を達成している(SX4、2WD車との比較)。そして大型化したボディは当然ながら多くの部分にゆとりを生み、客室スペースもラゲッジスペースも明確に拡大した。また荷室開口部は広く低くなって、これも荷物の積み下ろしに便利など、とことん先代からのネガ潰しを行った結果、あらゆる点で明らかに進化の跡がうかがえるモデルに仕上がっている。

ご存知だとは思うがこのクルマ、先代同様ハンガリーのマジャールスズキで生産され、日本には輸入車扱いで導入される。と言っても勿論右ハンドルだし、輸入車だからと言って日本で使うにあたり不都合を感じるところは何一つない。また、先代ではフィアットにも供給されて、いわゆるコラボの形態をとっていたが、今回のモデルではフィアットとの関係は切れて、独自モデルとなった。また新たに中国での生産も年内に立ち上がる予定だというから、やはり先代同様「グローバルカー」という位置づけだ。

見た目の印象は、やはり先代と比べてかなり大きくなった。そして、先代モデルはイタルデザインがエクステリアを主導してデザインしたモデルだった。それだけに、当時としてはスタイリングは大胆で抑揚の強いものだったが、今回、デザインに関する情報はないものの、こちらも正常進化というか、路線的にはややコンサバに戻された。だから、抑揚の強かったウェストラインはほぼ直線的に後方に伸び、視覚的にサイドまで回り込んでいたリアガラスは、ごく普通のデザインとされている。

試乗したのは新しいオールグリップなる4WDシステムを持つモデル。エンジンは1.6リットル117psの1グレードのみで、トランスミッションは7速のステップシフトを可能にするパドルシフト付きのCVTである。

乗り出した瞬間に、やはり先代以上にどっしりとした印象を受けた。果たして4WDモデル同士を比較してどれほど軽くなっているかは不明だが、少なくとも2WDモデルよりは70kg重く、先代の1.5リットル4WDモデルと比較すると40kg軽くなっている。にもかかわらずどっしり感はこちらが上。最近のスズキは、『アルト』に象徴される軽く仕上げてもペラペラした印象がないクルマ作りが出来ているのは大いに評価したい。

エンジンに関しては、先代のファイナルモデルには1.5リットルの設定しかなく、それから比べると100cc拡大した排気量は持つものの、性能的な伸びしろは少なくとも机上の上では大きなものではなく、実際に乗ってみても余裕を感じさせてくれるものではなかった。特に全開にしてエンジンがレブリミットに到達するような加速をした時は、少なからずフロアから振動が出る。また、こうした加速をした場合のCVTは、やはりATを上回るスムーズさを持たず、乗り方はドライバー自身が自ら自分の好みに合った加速の仕方(オートモードなのかステップシフトを使うのか)を見出した方が良い。

オールグリップはドライコンディションではその良さを感じ取るには至らないので、今回は試していない。そして年間の販売台数は輸入ということもあるのか、僅か600台と控えめである。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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