【ホンダ S660 プロトタイプ 試乗】ドライバーとの信頼関係が、限界を引き出させる…大谷達也

試乗記 国産車
ホンダ S660 プロトタイプ
ホンダ S660 プロトタイプ 全 12 枚 拡大写真

開発者の顔が見える日本車と久しぶりに出会った。『S660』の開発メンバーはひとりひとりの個性的な風貌もさることながら、とにかくメンバー同士の仲がいいことに驚かされる。いや、仲がいいというだけでなく、お互いが深く結び付き、信頼し合っている。

【画像全12枚】

だからこそ、長い時間をかけてクルマのコンセプトを練り上げ、個々の開発領域の壁を乗り越えて「いままでにないマイクロスポーツカーを作ろう」という目標に向けて一致団結できた。これが、S660を成功作へと導く最大の理由になったと思う。

そのコンセプトとは、「若者にも手に届きやすく、維持しやすいコストとすること」、「軽自動車という枠にとらわれない最高の走りを実現すること」、「上級者にしかできない高速コーナリングだけでなく、日常的なちょっとしたシーンでもスポーツカーの魅力を味わえること」、の3点に集約できる。

今回試乗したのはS660のプロトタイプで、会場は袖ヶ浦フォレストレースウェイ。ただし「プロト」といっても実態は生産車とほとんど変わらないスペックのようだ。

最初に驚かされるのは、オープンスポーツとは思えないボディ剛性の高さ。おかげで安心感と高級感がバツグンに高い。ちなみに捻り剛性は1999年にデビューした兄貴分の『S2000』を凌ぐという。これが走りと快適性の基盤となっていることは間違いない。

ステアリングのフィーリングは取り付け剛性含めて良好。くわえて初期の操舵ゲインを高めに設定しているせいか、ちょい乗りでハンドルを少し切るだけでも俊敏なコーナリングを味わえる。それでいながら高速コーナーでは4輪がしなやかに路面と接地したまま、安定したコーナリングが楽しめるのだ。

秀逸なのは、コーナリングの進入、中ほど、出口のそれぞれで、ドライバーの意識が前輪、四輪、そして最後は後輪と徐々に後ろにシフトしていくこと。つまり、S660はコーナーの各ステージで必要な情報をドライバーに的確に伝えることができるのだ。だからこそ、ドライバーは自信を持ってクルマの限界を引き出すことができる。この乗り手とクルマの間の信頼関係は、スポーツカーという乗り物にとって極めて重要なものだと思う。

おかげで試乗中は存分に限界走行ができたが、タイヤのグリップレベルが高いため、大きくスライドさせながら走ることはできない。その点を開発者に問いただすと「メーカーとしてはまず安全性を確保するのが使命。あとは個々のオーナーの判断に任せたい」との主旨の答えが返ってきた。なるほど、それはメーカーとして当然の姿勢だ。あとは、腕の立つドライバーは勝手にグリップレベルの低いタイヤに履き替えて、自己責任の範疇で思いっきり振り回すドライビングをすればいい。基本性能が極めて高いS660であれば、そんなドライバーの期待にも難なく応えてくれることだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

大谷達也|自動車ライター
元電気系エンジニアという経歴を持つせいか、最近は次世代エコカーとスーパースポーツカーという両極端なクルマを取材することが多い。いっぽうで「正確な知識に基づき、難しい話を平易な言葉で説明する」が執筆活動のテーマでもある。以前はCAR GRAPHIC編集部に20年間勤務し、副編集長を務めた。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本モータースポーツ記者会会長。

《大谷達也》

ピックアップ

レスポンス公式TikTok

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. マツダの新型「FRスポーツ」開発始動! 特許公開、次期ロードスターかアイコニックSPか?
  2. トヨタ『ルーミー』が10年ぶりの刷新…次期型はハイブリッド化か?
  3. 三菱自動車、7年ぶり復活『パジェロ』シリーズにHV導入も[新聞ウォッチ]
  4. 日産『フェアレディZ NISMO』に改良新型、6速MT追加…GT-R譲りのブレーキも採用
  5. トヨタ『プロボックス』ついに全面刷新か? 見えてきた次期型の進化
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 自動運転開発の分野で高まるNVIDIAとAWSの存在感、日本メーカーは中国のスピード感に対抗できるのか【AWS オートモーティブ AI イノベーション フォーラム】
  2. 居眠り・脇見を監視、「DMS」を義務化…乗用車は2031年から、バス・トラックではすでに普及
  3. 電動車は誰が最後まで面倒を見るのか…KPMGコンサルティング プリンシパル 轟木光 氏[インタビュー]
  4. ホンダの交換式電池、建設現場で実証…高さ385mの「トーチタワー」
  5. 「日本vs中国」だけでは語れない、電動化で競争は新たな段階へ…「GIIAS 2026」に見るインドネシア自動車市場の現在地
ランキングをもっと見る