【マツダ ロードスター 試乗】ベストバランスのS スペシャル&6MT…中村孝仁

試乗記 国産車
【マツダ ロードスター 試乗】ベストバランスのS スペシャル&6MT…中村孝仁
【マツダ ロードスター 試乗】ベストバランスのS スペシャル&6MT…中村孝仁 全 21 枚 拡大写真

マツダ『ロードスター』のハンドリングやドライビングプレジャーを思う存分楽しみたい。そんなユーザーに一番お薦めなのは、「S スペシャルパッケージ」の6MT仕様である。

ベースグレードのSに比べて20kgの重量増加。しかし、その内容は濃い。実際に乗ってみてSと一番違うと感じられたのは剛性感だ。あくまでも剛性“感”であって剛性ではない。数値は厳密にはわからないが、乗ったしっかり感はこちらが確実に上。それに寄与しているのが、トンネルブレースバーというプロペラシャフトを通すトンネル部分に補強を入れていること。まずこれでボディがシャキッとした。こうなるとスタビ無しのリアは腰砕け感が強くなり過ぎたのだろう。そこでリアにスタビライザーを装備、同時にダンパーも硬めのものを設定した。コーナーでの踏ん張りが強くなったことで、よりスムーズなコーナリングを行えるようトルセンLSDを奢っている。運動性能が変わったことで電動パワーステアリング(E-PAS)のセッティングも変えた。

音振対策として、ボンネット裏、リアホイールインナーなどにインシュレーターを奢ってある。これは価格差に対する高級感というか格差をつけた感が強い。格差といえば装備の差も歴然である。最大のポイントはマツダコネクトが装備されること。加えてSスペシャルパッケージでもオプション扱いだが、i-ELOOP 、i-stopなどが選べる。さらに山本主査が意図して外したというオートライトやオートワイパーも標準装備。

こうなるとその価格差は20万円以上のものがあるということで、費用対効果ではこのSスペシャルの方がぐんとお得ということになるわけだ。

幌をクローズして走り始めると、ベースグレード(S)との音の侵入度合いがだいぶ異なる印象だ。耳に近いせいか、やはりリアホイールインナーのインシュレーターが非常に効いているようで、排気音が一段籠った小さな音になっている。同時にロードノイズの侵入も明らかに小さい。ステアリングはだいぶこちらの方がシャープな印象を受ける。特に切り始めのシャープさが感じ取れ、うかつに前方から目を離すとすぐにあらぬ方向に行くから要注意だ。

6速のシフトフィールに変化はないが、ショートストロークでカチッと決まるそれは、スポーツカーはこうでなくちゃ…と思わせる気持ちの良いものだ。クラッチとフットレストはかなり近い。だからフットレストからクラッチペダルに足を乗せ換えて、クラッチを踏み込む時、何度かフットレストの縁を一緒に踏むことがあった。このあたりはマツダもわかっていて、ドライビングポジションとのせめぎ合いの結果、妥協せざるを得なかったポイントだそうである。

1.5リットルのスカイアクティブユニットは、ワインディングが続く伊豆スカイラインのような道を走る限り、パフォーマンス的な不満は全くない。しかし、少し高速で急ぎたいというような場合は物足りなさを覚えるかもしれないが、そもそも高速クルーザーではないから問題ないと思える。

試乗日はあいにくの雨&ウェット路面。それ以上に悩ましかったのは、霧がひどかったことだ。雨と言っても小雨程度なので、途中でオープンエアモータリングに切り替えた。ソフトトップの開閉は実に巧みなシステムだ。ルーフ中央のフックを外すと自動的にサイドウィンドーが少し下がり、あとはルーフを一気に手で後方に押しやるだけ。完全にたたまれるとカチッとルーフが固定されるのがわかる。この間精々3~4秒といったところである。硬いヘッドライナーがボディにピッタリと収まり、その下にソフトトップがしまわれているから、あえてソフトトップカバーも必要がない。このヘッドライナー、後ろ方向への長さとしてはおよそ25cmほどはあるだろうか。おかげでクローズの時、頭の上までこのヘッドライナーが被ってくるから、ソフトトップが露出しているのは後ろの部分だけ。この大きなヘッドライナーは、クローズした時の外観の美しさを確保したかったからだそうで、確かにスムーズなルーフラインを持つ。因みに高価なアルミ製で、トップの一番高いところに鉄製の重いパーツをつけたくなかったからと、山本主査がロードスターの拘り部分を披露してくれた。

とまあ、クルマの走る楽しさを存分に教えてくれる。しかし、ただ走るだけではなく、その気になればカップルでのグランドツーリングに耐えうる二つの小型スーツケースを飲み込むトランクも備えているし、小物入れもシート背後に設けている。SスペシャルならUSBスロットが二つあるから、音楽デバイスをつないで音楽を聴きながらスマホの充電もできる。

手ごろなパフォーマンス、扱いやすいハンドリング、必要最低限の機能性と、オープン2シーターで考えられる要件を完全に満たしているクルマといえるだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度 :★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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