【スズキ スペーシア カスタム 試乗】デュアルカメラブレーキサポートで軽の世界を変える…中村孝仁

試乗記 国産車
スズキ スペーシア カスタム
スズキ スペーシア カスタム 全 23 枚 拡大写真

『スペーシア』がマイナーチェンジされて、新たにS-エネチャージとデュアルカメラブレーキサポートが設定されるようになった。

S-エネチャージは全車標準。そしてデュアルカメラブレーキサポートは、設定車を全グレードに用意している。すでにS-エネチャージに関しては『ワゴンR』にも付いていたものだから、読者もきっと驚かないかもしれない。

しかし、後者のデュアルカメラブレーキサポート。名前こそ違うが、これ、ステレオカメラを使って前方を監視し、最悪の場合ブレーキをかけてくれる安全デバイスで、従来のレーダーブレーキサポートが30km/hまで対応していたのに対し、新しいデュアルカメラブレーキサポートは何と100km/hまで対応可能。

ステレオカメラ装着といえば、スバルの「 EyeSight(アイサイト)」が思い出されるが、このスズキのデュアルカメラブレーキサポート、実はアイサイトと同等のもの。つまり製作しているのも日立オートモティブシステムで同じ。

もちろん、細かい仕様は異なっているが、基本構造は同じなのである。だから、これによって得られる恩恵は単に100km/hからでも衝突の可能性があると危険を知らせ、最終的には衝突回避もしくは軽減のための急ブレーキを自動で踏んでくれるのみならず、誤発進抑制機能やふらつき警報、車線逸脱警報、先行車発進お知らせ機能などを含む。

現時点でスズキが採用しているふらつきや車線逸脱に対する警報は、基本的にピピッという警告音での警報に留まるが、このオプション自体がより一般化すれば、さらなる高度なシステムへと変貌させる可能性もあるという。

例えば、車線逸脱に対してはハンドルを引き戻す、あるいはハンドルに振動を与えるなど、他の輸入車メーカーなどがやっているようなシステム。それにカメラがあることによってACC、即ちアダプティブクルーズコントロールの装備なども可能になるというわけだ。これにもしミリ波レーダーでも付けば、メルセデス『Sクラス』並みの高度な安全システムを構築できる。

Sエネチャージに関しても進化した。ワゴンRについていたものは、15~85km/hのスピード範囲で最大6秒間のモーターアシストを受けられたものが、今回は発進後~85km/hまでとその作動範囲が拡大された。しかもアシスト時間は従来の6秒から30秒へと大きく伸びているのである。簡単に言えば、S-エネチャージはハイブリッド機能そのものである。まあ、マイルドハイブリッドだが。

しかし、そのことによってJC-08モードの燃費は30.6km/リットルにまで伸びた。それだけではない。始動時こそスターターモーターによるエンジン始動だが、その後一旦走り出して信号待ちなどで停車後の再始動は、ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)によってベルトによるエンジン始動を行うから、再スタートが実にスムーズでスターターモーターが飛び込んでエンジンがブルンとくる衝撃が皆無。エンジンも13km/hで停止してしまうから、停車も非常にスムーズだ。

ただし、この停止は問題もあって、ブレーキ踏力が停車まで一定なら問題ないのだが、少しでも踏力が弱まるとエンジンがかかってしまう。だから、完全停車した時にエンジンがかかっているという状況も多々あるわけだ。ワゴンRの時もその状況があったが、改良されたS-エネチャージでもその問題はまだ残っているようである。

新たにS-エネチャージを搭載した以外、走りで変化する要素はない。エンジンはR-06A型でCVTとの組み合わせは従来通り。加速アシスト時間は増えたものの、パフォーマンスに変化はない。従来通り加速中のエンジン出力は絞った状態である。ハンドリング等も大きな変化はない。

デュアルカメラブレーキサポートを試すところは残念ながらなかった。専用のテストコースでもあれば別だが今回は一般道の試乗だから、おいそれと試すわけにはいかず、その機能はわからずじまい。

しかし、このデバイスのコストを聞いて驚いた。こちらからの質問は、レーダーブレーキサポートに対してコストはどれぐらい上がりましたか? そして僕の想定した回答はおおよそ〇〇%だったのだが、とんでもなかった。このデバイス装備を推進した、四輪安全・情報設計部第一課課長、小澤渡氏によれば、2倍というレベルの話ではなく10倍まではいかないまでも数倍のレベルなのだという。

これはコストが重視される軽自動車の世界ではある意味とんでもない非常識。しかし、それを業界に先駆けて敢えて採用したスズキ自動車に大きな拍手を送りたい。恐らく軽自動車初のACCなんかもスズキ自動車が先駆けて付けてくるのではないかと思う。今や軽自動車の世界はとてつもなく大きく変貌し始めている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★★

中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 【スズキ ソリオ 新型試乗】乗り心地と静粛性はクラストップ、だが「損をしている」と思うのは…中村孝仁
  2. 日産 リーフ 新型をライバルと比較…アリア、テスラ、bZ4Xと何が違う?
  3. ついにハイブリッド化! 新型トヨタ『ランドクルーザー300』の発表にSNSでは「バク売れの予感」など話題に
  4. 15歳から運転できる「小さいオペル」に興味アリ!「通勤用にこういうのでいいんだよ」など注目集まる
  5. 世界最高級ピックアップトラック誕生!? トヨタ『センチュリーピックアップ』の可能性
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  3. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  4. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  5. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
ランキングをもっと見る