【ホンダ シャトル ハイブリッド 試乗】走り、内装の質感でオススメは「ハイブリッドX」…青山尚暉

試乗記 国産車
ホンダ シャトル ハイブリッド
ホンダ シャトル ハイブリッド 全 11 枚 拡大写真

『フィット』をベースにした新しいホンダのコンパクトワゴンが『シャトル』。『フィットシャトル』ではない。その理由はコンパクトワゴンとしての独自価値をアピールするためだが、ただフィット3の後ろにラゲッジを付けただけではないこだわりに注目だ。

例えば、先代と比べ鼻先を短くし、逆にリヤオーバーハングを伸ばし、ワゴンのユーティリティを追求したパッケージングである。そしてFF車の場合、フィットとはリヤサスまで違い(荷物の積載対応で当然ではあるが)、専用化されているのである。

グレード構成を見れば、ハイブリッドがメインなのは明らか。だって、ハイブリッド3グレード、ガソリン1グレードという、分かりやすい!? 布陣なのである。

全車にフルオートエアコンや走りの安心感を生む液封コンプライアンスブッシュを装備しているのはともかく、ハイブリッドにしかない「X」、「Z」グレードには、スピードコントロールのしやすさにも貢献するパドルシフト、乗り心地に利くザックス製振幅感型応ダンパーをおごっているのだから、これはもうハイブリッド、Xグレード以上に乗ってくださいね、と言っているようなものかもしれない。

ユーティリティにかかわる装備としてホテルのクロークをイメージしたという後席背後にあるカーディガンやハンドバッグが置ける便利なマルチユースバケットがあるが、これもまたハイブリッドのX以上にしか装備されないのである。

さて、フィットハイブリッドとパワステ、DCTは同じという、先代最高26.0km/リットルから一気に最高34.0km/リットルの燃費性能を身につけたハイブリッドで走りだせば、メーター&シフター回りの先進感、『ヴェゼル』を思わせるハイブリッド専用シフターから連続するハイデッキコンソールの高級感が印象的だ。その点、フツーの見栄えになるメーター、フツーのシフターになるガソリン車と世界は別物と言っていい。

1モーター方式だが、発進は基本的にEV走行。モータートルクのおかげで実に滑らかに、静かに前に出る。

乗り心地は専用ダンパー、足回りのセッティングもあって、最近のホンダ車としては例外的!? にしなやかでマイルド。走りだして10メートル程度走ったところで「これはいいぜ」と思わずうなってしまった。ガソリン車でガツッというショックを伴う段差でも、ほとんど何事もなかったようにスッといなし、すっきり通過してくれるのだ。

シートのかけ心地は実は2種類ある。ハイブリッドのXとZにはプライムスムース×ファブリックのコンビシートがおごられ、かけ心地はそうでないグレードと別格に感じるほど快適で心地良い。ここまでグレードによって前席のかけ心地に差があるクルマはそうはない。

エンジンを回す領域でも、遮音、吸音材がフィット、シャトルのガソリン車よりふんだんに使われていることもあって、静粛性は極めて高い。エンジンは伸びやかに気持ち良く回り、なんとも爽快(そうかい)な気分になれるのだ。

操縦安定性もガソリン車をしのぐ。曲がりやすさ、安定感で上回るのは、前後重量配分の違い。ガソリン車のFF車として常識的な前61:後39に対して、ラゲッジ部分にバッテリーを積むHVは前51:後49と前後バランスがいいのである。だからカーブや山道でもよりスッと気持ち良くインに入り、適度なキビキビ感さえ味わせてくれるのだ。

フィット3がデビューしたてのころ、ギクシャク感があった2ペダルマニュアルのDCTは今では熟成され、ギクシャク感は最小限。ブレーキタッチにしてもごく自然で違和感など皆無だった。

高速走行中心の実燃費は、ゆったり走って19km/リットル前後となかなかのもの(同じ条件でガソリン車は16km/リットル前後)。

シャトルのお薦めはもちろん免税車のハイブリッド(ガソリン車は50~60%減税)。グレードで言えばシートのかけ心地も上級の219万円の「X」がベストチョイスだろう(モード燃費は32.0km/リットル)。

ちなみに同じシャトルハイブリッドでもグレードでモード燃費が異なるからご注意を。ハイブリッドは34.0km/リットル、ハイブリッドXが32.0km/リットル、ハイブリッドZが29.6km/リットル(すべてFFの数値)となる。

そうそう、シャトルは先代同様、ドッグフレンドリー度も極めて高い。これだけ静かで乗り心地が良ければドライブ中の犬のストレスも最小限。さらに荷室開口部地上高は54cmとごく低く、段差なく、フロアも幅最大150cm、奥行き100cm、後席格納時フロア奥行き177cm、高さ83・5cmと広大。後席をダイブダウン格納した時のフロア高は52cmとこれまたごく低く(シート地上高は60cm)、犬をリヤドアから後席に乗せるのも、リヤドアから乗せて荷室に歩いて行かせることも容易なのである。

ちょっと残念なのは、後席エアコン吹き出し口を完備していないことぐらいだが(このクラスではないのが当たり前)、そもそもエアコンが強力(インバーター式でもあるし)、だから、後席に乗せた犬が暑がることはまずないと思える。

さらに後席ダイブダウン格納時、マルチユースバケット装着車にも対応する超スグレモノの純正ラゲッジマット(1万5120円)も用意されているから、愛犬家にも最高のコンパクトワゴンと言えそうだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
ペットフレンドリー度:★★★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行なっている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

《青山尚暉》

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