【テクトム 燃費マネージャー FCM-NX1】ドライブが“見える化”されるコスト&心理的効果は絶大

自動車 テクノロジー カーナビ/カーオーディオ新製品
ダッシュボード上に置いても視界の妨げにはならない
ダッシュボード上に置いても視界の妨げにはならない 全 12 枚 拡大写真

テクトムの「燃費マネージャー」は、車両の診断コネクタ(OBD:On-Board Diagnostics)に接続してダッシュボードに設置したディスプレイに回転数や速度、アクセル開度や水温、バッテリー電圧などのステータスをリアルタイムに表示させることができるデジタル表示計だ。その最新モデル「FCM-NX1」を実際に使ってみたのでその使い勝手と機能をレポートしたい。

◆装着・設置はごくカンタン

今回、FCM-NX1の取材にデモカーとして使ったのはスバルの『レヴォーグ』。OBD II端子はステアリングコラムの右下奥にあり、下からのぞき込めばカンタンに見つけられる。接続したのちに、FCM-NX1本体を視界の邪魔にならないダッシュボード上に設置する。両面テープとケーブルの結束バンドが同梱されるので、ダッシュボードとの固定は両面テープを用い、結束バンドとこちらで用意したガムテープを使ってペダル類に干渉しないようにケーブルを取り回した。

接続と本体の設置が済めば、準備は完了。イグニションボタンを押すと、起動画面が現れ、初回にメーカー名を選択する画面が出るので「スバル」を選択。これで各種のステータスが画面に表示されるようになる。手順は至って簡単だ。

ただ、燃費の正しい値を出すには補正作業が必要になる。というのも燃費マネージャーではインジェクターの噴射時間の数字を受け取っているが単位時間当たりの流量(燃料の噴射量)は分からないため、満タン給油による走行距離と給油量の入力が必要になるからだ。テクトムのウェブサイトでは、一部の車種についてこの補正値を「係数」として用意しており、前もってその係数を入力することでほぼ正しい燃費計算が可能になる。ただ、車両によっては年次仕様による差もわずかながらあるため、正確さを期すならば数回は満タン給油をおこなって補正した方がよいだろう。

なお今回の取材のデモカーとして使用したレヴォーグは、2015年4月に実施された年次改良により、新たに「アドバンスドセーフティパッケージ」が設定された。このFCM-NX1を運転席正面のダッシュボード上に置くと、同パッケージに含まれるLEDインジケーター「アイサイトアシストモニター」とメーター内のマルチインフォメーションディスプレイとが視界の直線上に並び視線移動が少なくて済むので、視認性はすこぶる良好だった。

◆多彩な表示項目、配慮された実用性

起動したら、表示項目を選ぶ。画面表示はカタカナ表記による4段、漢字表記になる3段/2段と文字の大きさは調整可能で、回転数など一部項目はグラフ表示にも対応している。実際の利用用途を考えるとカタカナ表記の4段は文字が小さく見づらいため、漢字表記の3段または2段を利用するケースがほとんどだろう。表示項目の選択は、本体右側にあるハードキーからおこなう。従来機種のFCM-2000は、ゲームパッドライクな十字キーだったが、「クリック感に乏しくとっさの操作で誤入力してしまうケースがしばしばあった」(燃費マネージャー開発者)とのことで、FCM-NX1では独立したボタンに変更された。

表示可能項目は下記の通り。
・瞬間燃費(km/L)
・平均燃費(km/L)
・燃料流量(cc/min・ml/min)
・アクセル開度(%)
・エンジン回転数(rpm)
・エンジン水温(度)
・車速(km/h)
・12Vバッテリー電圧(V)

上記の他、電気自動車/ハイブリッド車の一部には下記が表示可能。
・瞬間電費(km/kWh、)
・消費電力(kW)
・平均電費(km/kWh)
・SOC(State of Charge:バッテリー残量)(%)
・積算電力 (kWh)

さらに、ガソリン価格を予め設定しておくことで料金(円)の表示や、一部ACC(Adaptive Cruise Control:アダプティブクルーズコントロール)や衝突軽減ブレーキのセンサーで測定される前方車両との車間距離(m)の表示にも対応している。

この中でとくにユニークなのは、車間距離表示だろう。今回のデモカーとして使用したレヴォーグは4月の年次改良で全車に運転支援システムの「アイサイト(EyeSight) Ver.3」が標準化されたが、FCM-NX1ではこのアイサイトによって検出された前方車両からの距離も表示する。画面を見ていると、100m以上の先の車両も認識しており、画像認識の精度向上の一端が窺える。ただ、この機能は障害物や対向車が現れた場合でも距離表示するので、順走している前方車両を厳密に認識して距離表示をおこなうものではない。また念のため付言しておけば、燃費マネージャーは車両制御に一切変更を加えるものではなく、車両を遠隔コントロールしてしまうようなアクティブ指令をCAN BUSに流す仕組みには構造上なっていないので、ハッキング等によって不正操作されることはあり得ない。

筆者の場合、もっぱらこの車間距離と車速、そして回転数の3項目を表示させていた。平均燃費はセンターコンソール上部のマルチファンクションディスプレイに表示されているので、車速と回転数を見ながら燃費運転を心がけ、アイサイトのACC機能を使いながら車間距離表示をチェックする、という使い方だ。

◆アラーム機能を活用してエコ&安全運転

意外に便利だったのがアラーム機能。これは一部の表示項目について、設定値に達するとアラームを鳴らして注意喚起するというもので、たとえばエンジンの回しすぎを抑制するために4000rpm以上になった場合にアラームを設定したりすることが可能だ。上述の車間距離もアラーム設定が利用できるが、車速によって安全車間は異なるため、係数を設定することで車速に応じてアラームが鳴る閾値を変えることができる。こういう“かゆいところに手が届く”変更がきくあたりが、使い勝手に関して入念に練り込まれた製品であると感じさせてくれる。

実は筆者、自身のマイカーにもこのFCM-NX1を装着し利用している。メーターには当然ながら速度計や回転計、そして瞬間燃費計も備わっているのだが、わざわざメーターに視線を落とすことなく、ダッシュボードに設置したFCM-NX1の画面を見るだけで必要な情報が得られるありがたみを実感する。また、アナログなメーター表示による曖昧な情報ではなく、OBDから出る詳細な数字が表示されるので、速度と回転数との関係やアクセル開度の調節などを頭に入れながら運転する習慣が自ずと身につくようになった。装着後の具体的な燃費改善率はまだ具体的には分からないが、すくなくとも無用にアクセルを開けたりエンジン回転数を引っ張ったりするようなことは控えるようになり、意識の面では大きく変わったと言える。

このFCM-NX1、テクトムの公式Webサイトでの販売価格は2万9800円と、決して安くはない。しかし、燃費改善効果によるコスト改善はもとより、ドライビングの奥深さや楽しさを実感でき、マイカーへの愛着度を改めて高めてくれるという意味でも導入の意味は十分にある。テクトムによれば、今後もUSB端子を介してのバージョンアップを継続的におこなっていくとのことなので、新たな機能追加などもあるかも知れない。また社用車など業務用途での利用にも効果はありそうだ。

《山谷克明》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 船上で水素を製造できる「エナジー・オブザーバー」が9年間の航海へ
  2. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  3. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  4. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る