山谷国土強靱化担当相に聞く! 国土マネジメントと地方創生

自動車 社会 政治
国土強靱化と地方創生で「住み続けられるふるさと作りを」と話す山谷大臣
国土強靱化と地方創生で「住み続けられるふるさと作りを」と話す山谷大臣 全 3 枚 拡大写真

 日本が持続的な発展と成長を目指す上で、最大のリスクとなるのが大規模災害と人口減少だ。安倍政権はこの2点への対応を待ったなしの最重要課題と位置付け、新たな政策として2013年に「国土強靱(きょうじん)化」、14年に「地方創生」を掲げ、具体的な対策を始動させた。この二つの新政策を「車の両輪のような関係」と強調する山谷えり子国土強靱化担当相へのインタビューなどで、日本が目指すべき将来像を探った。

【画像全3枚】

 ――基本法が制定され国土強靱化が始動してから1年半が経過した。これまでの総括を。
 「公共事業は予算の無駄遣いで『悪』だという風潮が一時あったが、今では東日本大震災など度重なる災害を経て、社会資本を脆弱(ぜいじゃく)なままに放置することこそが問題だというように国民の認識も変わってきた。安全・安心のための基盤づくりは、人命や財産を守ると同時に新たな投資を呼び込み、国の発展にもつながる。つまり国土強靱化はコストではなく未来への投資だ。5月19日の経済財政諮問会議でも、こうした考え方を説明したところ、異論は全く出なかった」

 ――今後の課題は。
 「大きく二つある。まずは、地方自治体の取り組みの促進だ。国土強靱化地域計画の策定に39都道府県25市区町が着手し、うち5道県4市が計画を完成させた。この流れを加速させなければならない」
 「二つ目は、民間事業者の主体的な取り組みの促進だ。東日本大震災を教訓に災害時のサプライチェーンの確保や、被害規模の軽減を図る事業継続計画(BCP)の策定、東京などにある本社機能を移転する動きも出てきている。内閣官房国土強靱化推進室では6月に、こうした取り組みをより広く周知するため、民間事業者の取り組み事例集をつくった。これをさらに広げていきたい」

 ――国土強靱化と地方創生を「車の両輪のような関係」と位置付ける理由と狙いは。
 「石破茂地方創生担当相ともよく意見交換をさせていただいているが、両者がそうした関係にあることは必然とも言えるだろう。地方創生だけを進めて地域が活性化しても、社会資本が脆弱なまま大規模災害が起きればその成果は一瞬にして無に帰す。一方、国土強靱化だけを進めても、地域の創意工夫がなければ持続的な成長を達成することは難しい。二つの政策を連携・調和させ、限られた地域資源を最大限有効に活用することで、平時と非常時の両方で効果が出る」
 「私は福井県出身だが、自分のふるさとがいつ何時も、しっかりとあってほしいと思うのは国民共通の願いだろう。例えば、首都圏から本社の一部を分散すれば、地方の雇用を生み出し、東京で災害が起きた際にも首都機能の被害拡大を抑えることができる。再生可能エネルギーの地産地消を進めれば、災害時の代替エネルギーを確保し、地域の産業創出にもつながるなど、一石二鳥の効果が期待できる。今のふるさとに住み続けられるようにすること、新しいふるさとを築き上げることを目指し、国土強靱化と地方創生を連携させながら展開していくことが重要だ」

 ――今後、建設業に期待することは。
 「高度成長期に造られた社会資本の老朽化が進んでいる。平時には自治体と共に計画的な維持・更新を行い、引き続き地域の安全の担い手としてご協力をお願いしたい。東日本大震災のような大規模な災害時には、道路啓開をはじめ復旧・復興期にも中心的役割を担っていただいている。このような建設業の担い手を確保することは重要な課題であり、先に策定した『国土強靱化アクションプラン2015』にも位置付けたところだ」

 ――国土強靱化の取り組みを通じて展望する日本の将来像は。
 「日本は技術立国だ。今後、社会資本の更新技術の開発や活用が進んでいけば、国内外の防災・減災に貢献し、世界の中で日本の地位をさらに確固たるものにできるだろう。この機会を捉え、日本人ならではの強く優しい心で大切なものを守り抜く生き方や、正直さ・勤勉さ・チャレンジ精神といった価値観を取り戻すことも大切だ。そうなれば技術革新や雇用創出といった成果が目に見えて、日本が再び『上を向いて歩き始める』大きなきっかけになるだろう」。

 国土強靱化基本法は、地方自治体に対し、それぞれの地域に特有の災害リスクを考慮した国土強靱化地域計画を策定するよう求めている。7月21日までに、39都道府県と25市区町が地域計画作りに着手。うち5道県4市が計画を策定した。内閣官房国土強靱化推進室は、15年度中にすべての都道府県での策定を目指し、やや遅れている市町村での策定を促す目標を設定。さまざまな策定支援策も実施している。

 内閣官房国土強靱化推進室は7月までに、自治体にコンサルタントを派遣して計画策定への技術的助言を行うモデル事業の第3弾として大阪市や札幌市など14団体を選定した。モデル事業を始めた14年度の第1弾、第2弾分も含めると計36団体の策定を支援している。

 6月には、全国初となる地域計画策定指針の見直しも行った。国のモデル事業で計画策定が先行している自治体から得られた情報を活用。地域特有の災害リスクに効率的に対応できるよう防災・減災施策を重点化・優先順位付けした事例などを新たに紹介している。

 政府は、地域計画を策定してから取り組むインフラ整備には財政支援を優先的に行う方針も決めている。改定指針には、財政支援策である国土交通省の防災・安全交付金や厚生労働省の社会福祉施設等施設整備費補助金などの制度も一覧にしてまとめている。さらに、内閣官房国土強靱化推進室の職員が自治体に直接出向き、自治体の担当者や議員に対し地域計画に盛り込む内容や策定の手順などを解説する無料出前講座も始めた。

 国土強靱化は、今後30年以内に70%の確率で発生すると予測される首都直下・南海トラフ地震に備え、強くしなやかな国土造りを計画的・効率的に進める新しいリスクマネジメント策だ。全国一律で建築物の耐震化や防潮堤の整備といったハード一辺倒の対策を進めるのではなく、災害リスクが高く国全体の社会経済活動や暮らしに支障を来す区域から防災・減災の取り組みを優先。避難誘導などソフト対策も組み合わせ、限られた予算の中で被害の最小化を図るのが特色だ。

 約2万人もの死傷者・行方不明者を出した東日本大震災を教訓に、2013年12月に議員立法として国土強靱化基本法が施行された。
 基本法では、国に対し官民で推進する防災・減災の取り組みの優先順位と目標値を定めた国土強靱化基本計画と行動計画(アクションプラン)の策定を義務付けた。基本計画は5年ごと、行動計画は1年ごとに見直すことも求めた。最新の目標達成度合いを「見える化」し、最新の災害に確実に対応できるようにするためだ。地方自治体には地域特有の災害リスクに対応する国土強靱化地域計画の策定を求めている。

 6月に決定した15年度版の国土強靱化行動計画では、14年に起きた広島市北部での大規模土砂災害や御嶽山(岐阜・長野県境)の噴火災害を教訓に、喫緊の課題である土砂災害と火山災害に対する施策を充実させた。土砂災害対策では新規施策として都道府県による土砂災害警戒区域の指定数を現在の約40万区域から16年度までに約46万区域へと引き上げる目標を追加した。既設建物の移転や新規建物の立地規制を促す狙いがある。

 一方、地方創生は、人口減少で2040年までに市町村の半数が消滅すると予測した民間研究機関のリポートを踏まえ、東京への一極集中是正と地方都市での著しい人口減少に歯止めを掛ける新しいリスクマネジメント策となる。昨年12月には地方創生の基本理念を定めた「まち・ひと・しごと創生法」が施行された。地方創生の具体策の一つが「稼げる」公共事業の展開だ。例えば、国土交通省は一般道を利用するドライバーの休憩施設「道の駅」を地方創生の新たな拠点施設として進化させる方針だ。駐車場やトイレといった最低限の施設に加え、宿泊施設や高齢者住宅、防災倉庫なども併設させる改修計画に重点的に財政支援する取り組みを始めた。

 地域の安全・安心と豊かさの維持向上-。今の日本が早急に求められているこれら二つの最重要課題に対応するため、山谷えり子国土強靱化担当相と石破茂地方創生担当相は、二つの新政策を連携して進める必要性を繰り返し強調している。どちらかが欠けても、発展・成長し続けられる国土・地域を形成できないからだ。6月に決定した政府の16年度予算編成方針「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太の方針)」では、前年度以上に予算の選択と集中を図る方針が決まったが、引き続き国土強靱化と地方創生は重点化すべき政策に位置付けられた。

 政府が、国土強靱化と地方創生を具体化していく際に中心的役割を担うとみているのが建設業だ。日本建設業連合会(日建連)は、3月にまとめた2050年を見据えた建設業の長期ビジョン「再生と進化に向けて」の中で、国土造りの担い手の確保・育成を継続しながら、防災・減災・応災対策の一体的推進やコンパクトシティー作りなどで国土強靱化や地方創生に貢献することを打ち出している。

山谷国土強靱化担当相に聞く!国土マネジメントと地方創生、国の支援策整備・強化相次ぐ

《日刊建設工業新聞》

ピックアップ

レスポンス公式TikTok

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 日産『スカイライン』新型が12月公開へ! 開発期間を半減、“日産復活の象徴”はどうなる?
  2. フォルクスワーゲン、新型EV『ID.ティグアン』を世界初公開へ エンジン車のティグアンも併売
  3. コメリの洗車用「デカスギドライクロス」に“片面仕様”登場! 絞りやすさと吸水力を両立
  4. BMW 3シリーズ 新型、9月30日デビューへ…第8世代は内燃エンジン全車がハイブリッドに
  5. ヤマハ『XSR900』を「USインターカラー」に変身! ワイズギア、外装セットを限定発売 価格は29万9200円
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 【全文PDFプレカン】日産自動車 長期ビジョン発表会
  2. タイ矢崎電線のアルミ新工場がタイに完成、生産量3倍に増強…送配電網・自動車向けに対応
  3. [Key Person Interview]圧倒的な地の利を活かすラストワンマイルの担い手…駅レンタカーシステム代表取締役社長小堀明夫氏
  4. インド国産化の進め方、事業の核の築き方【インド・新自動車大国の素顔】
  5. 【セミナー見逃し配信】※プレミアム・法人会員限定 欧州自動車産業の次の一手、欧州の現場で何が起きているのか~EV減速局面・SDV/AIへの移行・中国勢の浸透~
ランキングをもっと見る