【VW ゴルフ R ヴァリアント 試乗】能ある鷹は爪を隠す、文句なしの走り。でも…中村孝仁

試乗記 輸入車
VW ゴルフ Rヴァリアント
VW ゴルフ Rヴァリアント 全 20 枚 拡大写真

お盆休みの10日間、『ゴルフ Rヴァリアント』と至福の時を過ごした。2リットル直4ターボエンジンで280ps。スペックを見る限り、似たようなものはゴロゴロしているだが、このクルマ、侮ってはいけない。

既存ユニットをベースに、シリンダーヘッド、ピストン、高圧インジェクションバルブ、ターボチャージャーなどを新たに設計。それもモータースポーツ用エンジンの開発プログラムが適用されているというから、乗って走り出した瞬間から違いが鮮明である。

何が基本的に違うかというと、最も顕著なのはアクセルに対するレスポンスだ。しかもこれをアダプティブシャシーコントロール(DCC)とマッチさせて走ると愉快、痛快を通り越してその凶暴さを露わにする。

DCCは既存『ゴルフ』でも装備するモデルがあるが、Rと名の付くこのモデルの違いは、スポーツの代わりにレースと呼ばれるモードがつくこと。

レースをチョイスすると常に身構えた状態で、DSGが1速高いギアをセレクトし、アクセルを踏み込んだ瞬間に素早い反応で一気に加速を開始する。それに呼応する4本出しのエクゾーストからは快音が響く。近年久しく4気筒でいい音を聞かなかったが、このRヴァリアントのエクゾーストサウンドは秀逸だ。

10日間の後半、とんでもないいわゆるバケツをひっくり返したようと表現できる豪雨に見舞われた。しかし、4モーションの安定性を痛感するだけで、ステアリングを取られることは一切なし。抜群の安定感で高速を巡行することが出来た。

そして同じ日、雨上がりで17kmも渋滞する状況に遭遇。ここではアダプティブクルーズコントロール(ACC)を駆使して、この間ただの一度もブレーキを踏むことなく渋滞を通過。その快適さはこうしたハイパフォーマンスカーでも、交通状況に即応した楽々ドライブの必要性を痛感させてくれた。ACCに対しては邪道だと思われるユーザーが多いように感じるが、一度その利便性を味わってしまうとまず後戻りできないと思う。

プログレッシブレートのギア比を持つステアリングは、パーキングなどでは軽くスムーズで、高速コーナリングでは手ごたえを感じさせ、しっかりとしたインフォメーションを与える設定で、これがDCCによってさらにモードごとに細かく仕様が変わる。今回はほとんどの状況をエコもしくはコンフォート、ノーマルで過ごし、レースモードは空いた高速でのみ使用した。

コンフォートは足もかなりソフトなイメージで、かといってアクセルを開けると怒涛の加速を開始する、ややもするとジキルとハイド的な設定で、こいつが案外楽しめる。また、エコをセレクトしておくと、アクセルを離した瞬間にコースティングモードに入り、クラッチが切れた状態で空走するので、一般道などでは思いもよらないスピードで前車に追いついてしまうことがあったから、エコに入れている時は車間距離に注意する必要がある。

タイトルに、でも…と書いた部分であるが、クルマとしての性能は文句なしで言うところなしなのだが、装備には多少問題が残る。今回は横浜から河口湖周辺に足を向けた。ルートは東名から圏央道に入り、中央高速経由で河口湖へ向かうというもの。

ところがである。まだデビューしたてのクルマだというのに、圏央道が地図にはない。具体的には海老名から高尾までが未開通の地図なのである。これはいかがなものだろうか。そしてもう一つ。レーンキープアシストという有り難い機能がついていて、白線をカメラで認識し、逸脱しそうになるとステアリングで修正してくれるというものなのだが、直線状態でリラックスしてステアリングを握っていても、クルマはステアリングを握っていないと判断し、ピーッとワーニングを出す。それも高々100km程度の距離で何度も何度も、これに辟易してレーンキープアシストを解除してしまったほどだ。安全優先はわかるが、これだとリラックスした運転はできない。ワーニングの出し方はもう少し工夫していただいた方が良いと思えた。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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