オイルの缶を見るとSAEの粘度が書かれた丸印のまわりを、もうひとまわり丸で囲みアルファベットが刻まれたマークを目にすることがあるはずだ。通称、ドーナツマークと言われるこのマークには「API規格」が表示されている。
このドーナツマークの上半分はAPIサービス分類で、エンジンに対する性能を示している。中央はオイルの粘度を示すSAE粘度表示で、下半分は省燃費性能を示しており、この性能を持っていないオイルは空白となる。
APIというのは、“American Petroleum Institute”の略で米国石油協会の事。 国際的に使用されるエンジンオイルの性能分類規格でよく知られている。APIの規格はSAEのように粘度の規格ではなく、オイルの品質の規格なので、SAEの粘度表示とともにドーナツマークで表示されるというわけだ。この品質はグレードと呼ばれることもある。つまり、ドーナツマークを見れば、どの粘度のオイルで、品質グレードはどのレベルにあるかがわかるというわけ。
API規格ではガソリンエンジン用のオイルはSで始まる2文字のアルファベットで表される。もっとも低いグレードは「SA」となり、これは無添加の純鉱物油で、軽度な運転条件のエンジン用。特別な性能は要求されない…となっている。
純鉱物油ということは、原油を精製しただけの油ということ。現実的には手に入れることも難しく、今のクルマには使わないエンジンオイルだ。ゆっくりとした回転で、しかも低負荷で作動する圧縮比も低いエンジンで、かろうじて使うことができるようなオイルとなる。
API規格はSAからSNまでグレードがあるが、「SI」と「SK」は欠番となっている。ここではおもなグレードを紹介していこう。
まずは「SF」。「SF」グレードは1980年式以降の米国乗用車および一部のガソリントラック車用という位置づけになっている。ひとつ上の「SG」がエンジンメーカー推薦下で運転される1989年以降のガソリン乗用車、バン、軽トラックに適応…となっていることからも、1980年代のクルマには「SF」が対応するということになる。
同様に「SH」がエンジンメーカー推薦下で運転される1993年以降のガソリン車に対応…と書かれていることから「SG」は1989年~1992年のクルマに対応するということになる。
最新の規格である「SN」は、従来のSM規格よりも、省燃費性能、オイル耐久性、触媒システム保護性能の改善が求められている。省燃費性能はSM規格対比0.5%以上の改善。オイル耐久性はデポジットの発生をSM規格対比14%以上改善。触媒システム保護性能の改善は触媒に悪影響を与えるリンの蒸発を20%までに抑制することが求められる。
ディーゼルエンジン用オイルの規格は「CA」からもっとも上級の「CF-4」まで7段階にグレード分けされている。多くのオイルメーカーがこの表示を使っていることで、横並びでオイルの性能を比較できるというわけだ。