【池原照雄の単眼複眼】スズキの提携、次の一手は「自立」前提に焦らず

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スズキの鈴木修会長
スズキの鈴木修会長 全 6 枚 拡大写真

まだ次のことまで考える余裕はない…

スズキは独VW(フォルクスワーゲン)との提携解消をめぐる対立が落着し、「非常にスッキリした」(鈴木修会長)状態で、新たな一歩を踏み出した。だが、将来の環境技術を全て自力でまかなうのは厳しく、次の提携の模索も始まるだろう。

「まだ次のことまで考える余裕はないので、時間をかけてコメントしたい」。鈴木会長は、国際仲裁裁判所の判断を受けた8月30日の緊急記者会見の冒頭に今後の提携戦略を聴かれ、こう答えた。さらに「自立して生きて行くことを前提に考えたい」と、独自路線をにじませるものの「将来のことは慎重に考えていきたい」とも述べ、ここはじっくり構えようとの姿勢を覗かせた。

◆迷走の間に自社技術は進展した

VWとの提携の大きな狙いであった環境技術については、2009年末の提携から6年近く迷走した間に「技術者が奮起し、(VWとの提携の)ほとんどの目的が解決できてきた」と、自社技術の進展を評価した。具体的な成果として簡易型のハイブリッド車(HV)技術の軽自動車と小型車での実用化などを挙げた。

HVについては「S-エネチャージ」(軽自動車)や「マイルドハイブリッド」(小型車)と呼んでいる簡易型だけでなく、「まだ技術的課題がある」(鈴木俊宏社長)というものの本格型(ストロングタイプ)の開発も進捗している。こちらは、来年までには市場投入する見込みとなっている。ただ、燃料電池車(FCV)など長期の開発課題にはまだ、十分な手当てができていないのが実情だ。

VWとの提携も元来、そうした将来課題に対処するためだった。いわば轍を踏んでしまった今回の提携戦略について鈴木会長は、「色々な企業があるとつくづく思った。まだ経験不足と反省しているし、大変貴重な経験だった」と振り返る。そのうえで前述の「自立して生きていくことを前提に」と発言した。資本提携には慎重に臨むということになるだろう。

◆“補完提携”のパートナーはいずこに

しかし、近年の自動車メーカー間の提携は、資本にはそうこだわらず、双方の独立性を尊重しながら特定分野で協力するケースが主流となっている。トヨタ自動車とマツダ、富士重工業(スバル)、独BMWの提携、あるいは日産自動車・仏ルノー連合と独ダイムラーといった組み合わせである。1990年代末以降に表面化した規模の追求に主眼を置いた提携の失敗を教訓にしているといえよう。

つまり、個々の企業やブランドのアイデンティティを生かす「補完提携」が、結果として双方の競争力強化につながる――世界の自動車経営者はそこに気づいてきたのだ。のんびりはできないが、スズキもここで焦ることはない。この一件落着で進退を問われた鈴木会長は「まったく考えていない」と、現職の続投に意欲を示した。ほどなく最適のパートナー探しに動き出すのだろう。

《池原照雄》

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