【エンジンオイル講座 vol.3】意外と知らない、エンジンオイルの歴史…カストロール編

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エンジンオイルの進化はモータースポーツとも密接な関係がある(参考画像)
エンジンオイルの進化はモータースポーツとも密接な関係がある(参考画像) 全 4 枚 拡大写真

記録によれば、人類は古代ピラミッド時代には石材を運ぶ際のオリーブオイルを潤滑剤として使用していたという。人類と潤滑油の歴史は機械文明が発生する以前から、連綿と続いてきた。

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英国に本拠を置くカストロールは、サーチャールズ・ウェイクフィールドが19世紀末に設立した「ウェイクフィールドモーターオイル」にそのルーツを持つ。20世紀に入ると、ウェイクフィールドは自動車と航空機に興味を持ち始め、その動力源であるエンジンが求めるオイルの開発に着手。植物油の「ひまし油」を混合することで低温から高温まで高い性能を維持することに成功した。

ウェイクフィールドはそのオイルにひまし油(Castor oil)からとった「Castrol」をブランド名に冠した。

余談ではあるが「ひまし油」ベースのオイルでもっとも有名なのがカストロールのR30(すでに製造は終了)で、2サイクルエンジンの混合燃料(ガソリンに潤滑油を混ぜる方式)用として使われてきた。2輪のレースをやっているサーキットに行くと、カストロールR30が燃えたときに発する甘い香りが漂っていて、独特の雰囲気をかもし出していた。

オイルの進化はモータースポーツをはじめとした競技と密接に関係している。カストロールは航空機のイベントや自動車レース、そして地上最速記録を破ろうとするドライバーのイベントなどを積極的に支援すると同時に各ユーザーのエンジンに合うオイルを開発し、製品ラインアップを増やしていった。

カストロールは「CC Wakefield & Company」という会社で製造されていたが、ブランド名であるカストロールがメジャーになったことを機に1960年に社名を「Castrol Ltd.」に変更。社名が変わってもその研究に対する真摯な姿勢は変わらず、研究施設を英国のBracknellに開設するなどしている。

1960年代はまさにスピードの時代で、ロータスが『エリーゼ』を、フェラーリが『250LM』を、トヨタが『2000GT』をデビューさせた時代。F1で言えば、フロントエンジンからミッドシップレアウトのリアエンジンに変更された時代。カストロールの歴史は、スピードの歴史のなかで、栄光の歴史を刻む歴史だった。

1966年、カストロールはBurmah Oil Companyに買収されるが、そのオイルに掛ける情熱は変わりのないもので、1967年に進水した当時世界で最も豪華な客船だったクイーンエリザベス2世号にもカストロールの潤滑油が使用されていたという。

近年では2012年に火星のミッションを始めたキュリオシティローバー(地上探査機)でカストロールインダストリアルの潤滑油(グリース)が使用された。ホイールからカメラまでの部品が多くの部分に採用された。使われた潤滑油(グリース)はマイナス80度~204度までの温度範囲で使えるように開発された。

火星表面の気圧は7ヘクトパスカル(地球上は約1000ヘクトパスカル)とも言われている。気圧が下がると液体の沸点が下がる(ボイル・シャルルの法則)ので、7ヘクトパスカルという低気圧、204度という高温での機能を維持するには、高い技術力が必要。これを実現できたのも、カストロールが培ってきたノウハウがあるからにほかならない。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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