【スズキ ソリオ 試乗】軽に見えちゃうけど、中身は相当すごい…中村孝仁

試乗記 国産車
スズキ ソリオ
スズキ ソリオ 全 17 枚 拡大写真

スズキのトール系コンパクトカー、『ソリオ』がフルチェンジを果たし、4代目に生まれ変わった。プラットフォームを一新し、エンジンも新型としたオールニューである。

しかしながら、見た目はというと軽自動車の『スペーシアカスタム』とうり二つと感じてしまうのは、僕だけだろうか。近寄ってみると確かに大きい。だから軽自動車とは思わないのだが、遠目には白いナンバーを見ない限り軽自動車に見える。それは明らかにデザインをトール系の軽ワゴンから踏襲しているからに外ならず、売れているクルマのモデルチェンジの難しさをまざまざと見せつける。

しかし、ネガ要素を探して見つかるのはこのくらい。実はこのクルマ、相当にすごい。まずは一新されたプラットフォームとエンジンによって、全体の60%に及ぶ軽量化を達成している。残りは足回りと内装部品で40%。全体では従来車より100kgの軽量化を達成し、一番重い4WDモデルでも990kgと1tを割り、最軽量は930kgである。そもそも軽自動車でもトール系のモデルは重く、ライバルのメーカーでは軽ですら1トンを超えるクルマがある中での1トン切りは相当にすごい。プラットフォームは新開発だが、基本的には生まれたばかりのアルトと同じ要素を用いたもので、軽量化の秘密はそこにある。

次にエンジンは新しいK12Cと呼ばれるデュアルジェットの直4ユニット。従来のK12Bでさえ小さなエンジンのはずだが、そこから高さ方向で31mm、エンジン長で12mm、そしてエンジン幅で7mmの縮小を達成。エンジン搭載も従来の15度から5度とほぼ垂直に立てることで、エンジンルームをさらにコンパクトにすることが出来た。それにこのエンジン、何と12.5という高い圧縮比を達成している。

スズキは今回初めてマイルドハイブリッドという表現を採用したが、要するに内容は「Sエネチャージ」そのもの。勿論軽のものと比べるとモーターパワーなどが増大しているそうだが、敢えてSエネチャージではなく、小型車のジャンルにおいては今後もマイルドハイブリッドという表現を使うそうである。

エンジンの再始動はISGが行い、エンジンストップは車速13km/h以下で行われる。アイドリングストップの際のエンジン停止は気にしていないとまず気付かないし、発進時のエンジン再始動にしてもセルモーターを使うわけではないので、これもほとんど気が付かないレベルのスムーズさを持っていて、システムが異なるとはいえ、Dセグメントの高級輸入車よりもその振る舞いは静かでスムーズ。エンジンを停止、再始動させるスムーズさにおいてはこれを上回るものがないと思えるほど見事なセッティングが出ている。

100kgも軽量化したにもかかわらず、ボディのしっかり感と走りのどっしり感はきちんと保たれ、トール系にもかかわらず、安定した走行を楽しめる。試乗日はかなり風が強く、高速上では頻繁にステアリングを取られる状況だったが、非常に安心感は高かった。唯一軽量化の置き土産としては、静粛性への配慮が欠けていることがある。特に路面からの音の侵入が遮断できておらず、ロードノイズは高めに聞こえ、それによって風切音やエンジンノイズが気にならないレベルになっている。

ちょっと個人的に許せないのは、キャスターアクションがほぼゼロで、角を曲がった時など、ステアリングから手を放すのではなくちゃんとアシストして戻してやらなくてはいけないこと。フリクションを減らして燃費を稼ぎたい気持ちもわかるが、もう少しセルフステア特性を持たせても良いと思う。このあたりはエンジニアと話をしたがメーカー側もわかっているようだ。

装備レベルは変な言い方だが高級車並。デュアルカメラブレーキサポート装着車に全方位モニター付きナビゲーションを装備すれば文句なし。デュアルカメラは5km/h~100km/hの範囲で前方の車両や歩行者を検知、最悪のケースでは自動で強いブレーキをかけてくれるし、これを使って車線逸脱警報やふらつきの警報、先行車発進お知らせ機能などがつくし、全方位モニター付きナビはリアビューとバーズアイビューをモニターに映し出してパーキングをアシストしてくれる。

さらにロールサンシェードやUVカットガラスなども装備して、万全ともいえる装備である。さらに細かい配慮として、ドライバーズシート脇に小さなポケットが装備され、駐車場で財布を出した時にちょっと置くスペースがあるのは非常に便利だと思った。とにかく細かい配慮が行き届いたまさに痒い所に手が届くクルマである。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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