【F1 日本GP】浜島裕英の見所チェック…フォーメーションラップ、タイヤ暖めの差はどこに出る!?

モータースポーツ/エンタメ モータースポーツ
2015F1日本GPフリー走行
2015F1日本GPフリー走行 全 8 枚 拡大写真

レーシングタイヤのプロフェッショナルである浜島裕英氏に、「タイヤ」に着目したF1日本GPの見所を語ってもらう第3弾。タイヤを最も上手く使い切ることができるドライバーは誰なのか。そして注目のポイントは。

◆タイヤ戦争時代に磨かれたベテランドライバーの卓越した技術

F1で2006年まで続いた“タイヤ戦争”を経験しているベテランのドライバーたちは、こういう作業は非常に長けていますね。今で言えばジェンソン・バトン、アロンソ、そしてキミ・ライコネンあたり。特にアロンソは暖め方も上手いし、その上タイヤを長く持たせることができるドライバーです。ガツンとブレーキングして、速いスピードで曲がることができる。だから冷えたタイヤでもすぐに熱を入れることができるのです。

そして、グリップの限界の、微妙な部分を感じ取ることができるので、タイヤを滑らせることがないので傷まない。あのレベルでタイヤを使うことができるドライバーは、なかなかいないと思います。

一方、バトンとライコネンは、タイヤをもたせるのは上手いんですけど、優しいドライビングのため、暖めるのには苦労しますね。ほんのちょっとの差なんですけど、難しいんですよね。

タイヤ戦争を経験してはいませんが、セバスチャン・ベッテルはこのあたりが非常に上手です。彼は当時、細かく聞きに来ていました。暖め方とか、タイヤのデグラデーションとか……納得してくれない時は、分子レベルの話もしましたよ。英語でそれを説明するのは、すごく難しいんですけどね。

ルイス・ハミルトンも上手いですが、フロントタイヤには厳しすぎてしまう……。例えばトルコGPでターン8という高速コーナーがありましたが、彼はそこをアウト側のフロントタイヤ1本だけで走るような感じなんです。速いのは間違いないのですが、その分負荷は高く、タイヤを壊してしまうこともあります。

メルセデスAMGのもうひとり、ニコ・ロズベルグは、そういう作業をこれまでピットからの指示に頼りすぎていた印象です。無線で指示ができなくなった今、ロズベルグが自分の力でしっかりとタイヤの温度をコントロールできるのかどうかは、注目すべきところでしょう。

◆フォーメーションラップでのタイヤ暖めの差は1周目の2コーナーで見られる

そういう色々な作業行いながらフォーメーションラップを終え、グリッドに付きます。前の方のグリッドのドライバーは、スタートまで待つ時間が後方グリッドのマシンよりも長いので、タイヤの温度は若干高めにします。

そして、レーススタート。あとは速く走りながら、タイヤを長くもたせるということに終始します。タイヤを持たせるためには、前述のとおり、極力滑らせないようにしなければいけません。そして、滑らないギリギリの所で速度とステアリングの舵角をコントロールする……これは一種の才能と言えると思いますが、優れたドライバーは、腰とかお尻に敏感な“センサー”を持っていて、こういう部分を感じ取ることができます。このセンサーの精度が、とても重要。私はタイヤも作っていたし、理論的には分かっていますが、それを感じ取ることはできません…。

タイヤを最適な温度と内圧にすることが、もっとも重要視される場所、鈴鹿で言えばそれはスタート直後の1コーナー~2コーナーでしょう。ここをちゃんと走れないと、S字に向かう前にライバルの餌食になってしまうでしょう。特に2コーナーは、ブレーキングも必要ですから、タイヤが暖まっていないとスピンしてしまう可能性もあります。タイヤウォーマーが使えないスーパーGTなどでは、そういうシーンがよくありますね。S字まで行けてしまえば、抜きにくいコーナーですし、左右にマシンを動かす連続コーナーですから、その間にタイヤが暖まる。なので、スタート直後の2コーナーが注目でしょうね。

【浜島裕英氏】
ブリヂストンがF1にタイヤを供給していた1997年から2010年までの14年間にわたってモータースポーツタイヤ開発ディレクターとして現場の指揮を執り、その後12年から14年まではフェラーリに在籍しタイヤに関するアドバイスを行った。現在はフリーとしてF1テレビ解説などを行っている。

《レスポンス編集部》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 車検NGの落とし穴!? シート交換で絶対に知っておくべき新ルール~カスタムHOW TO~
  2. トヨタの大型ピックアップトラックの逆輸入に期待? 新型発表に日本のファンも熱視線
  3. 次期BMW『X5』の車内を激写! メーターパネル廃止、全く新しいパノラミックiDriveディスプレイを搭載
  4. ホンダ『CB1000F SE コンセプト』を世界初披露! カウルが付いてネオレトロ感アップ、MSショーからの変更点もチェック!
  5. 中国マイクロEV『小馬』10万台を販売した「かわいいペット」戦略
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  3. ブレンボが新ブレーキ開発、粒子状物質を削減…寿命も最大2倍に
  4. スズキ初のBEVはなぜ「軽EV」じゃない?『eビターラ』開発者が語る「EVの悪循環」と「スズキの強み」
  5. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
ランキングをもっと見る