【テスラ モデルS P85D 試乗】まさに「インセイン」! GT-R も真っ青の4WDパフォーマンス…桂伸一

試乗記 輸入車
テスラ モデルS P85D
テスラ モデルS P85D 全 16 枚 拡大写真

後輪駆動の『モデルS P85』に、おとな3名が乗車してフル加速した瞬間、ドライバーを含む全員が後頭部をヘッドレストに打ち付けた!! 

ま、そんな異次元体験があるだけに、デュアルモーターを意味する「D」の4輪駆動、『P85D』の威力はある程度予測できた。

雨上がりの湿った路面、ワインディングの入口で一端停止。走行モードは「スポーツ」の上にある「インセイン」(正気じゃない/狂気な意味)を選択。とてつもない何かが起りそうな期待と不安が入り乱れるモードである。

ブレーキペダルから足を離し、やおらアクセルペダルを上から踏み潰す!! ドッカーンと“音が聞こえた気がする”衝撃波に襲われ、車内の空気が動いたと同時に乗員は一瞬天を仰ぎ、そら恐ろしい勢いで突進する。御存じのとおり、モーターは瞬間的に最大トルクを発生する。タイヤが転がったと同時に後輪が路面を蹴り、前輪は引っ掻き、ゼロスタートの瞬発力は0-100km/h3.3秒!! それに近い数値のスーパースポーツカーは体験しているが、力の出方が何より強烈である。

と、車内は一瞬の沈黙ののちに何故か笑いが起きる。人間、あまりにも突拍子も無い衝撃を受けると驚きを通り越して笑ってしまう事実を再発見する。

◆エンジン制御とモーター制御のレスポンスの違い

一瞬のホイールスピンも感じさせないトラクション能力は、車重2.2tがほぼ均等に4輪に分散された結果、タイヤ1輪あたりに約550kgの荷重が加わった接地バランスの良さと、デュアルモーターが前後輪の動力をTCS(トラクションコントロール)を介して緻密に繊細に最適に配分。しかもモーターだからこそ瞬時に制御できるため、加速から旋回に荷重移動しても前後左右輪に最適な駆動力配分が行われる制御。それがドライバーを含む乗員にはいつ制御が働いたのかも感じられない。ここがエンジン制御とモーター制御のレスポンスの違い、加減速が瞬時に行えるモーターの強みだ。

不規則なアールが連続するコーナーを、まるで道に溝でもあるかのように、ステア操作どおり、しかも尋常じゃない旋回速度を可能にするのは重量物であるバッテリーが床一面に敷き詰められた低重心の恩恵。アクセルを深く踏み込んで豪快な立ち上がり加速Gに襲われながら、意図した方向に素直に曲がる。不思議なのはタイヤの一瞬のスライド感も伝わらない事。つまりアンダーステアも、もちろんオーバーステアにも変化しないスタビリティコントロールが活きる。

この勢いを沈めるためのブレーキはもちろん大径で厚みのあるディスクローターと大型キャリパーにタイヤはコンチネンタル・スポーツコンタクト5が路面をしっかり捉え、角のない滑らかな乗り味をサスペンションとともに造り上げる。 

◆テスラに乗るならこれしかない

『GT-R』も『ランエボ』も『インプレッサ』もアウディ「RS」系と、世に名だたる4WDも真っ青になるフットワークをさらりとこなすP85D。

操縦安定性は高いが、なにせ速度が尋常ではない域に瞬時に達するので、かなりの意味で危険をはらむ。そこに自動運転の一環である、フォワードビューカメラ、レーダー、360度超音波センサーから、自動緊急ブレーキと死角警報、アダプティブクルーズコントロール機能が加わり、出過ぎた加速Gを鎮火して、また一歩未来に近づく。

車間を量り距離を保つアダプティブクルーズ制御も、モーターのレスポンスならでは。瞬時に加減速が効くことが、こんなにも自然な事か、と改めて知る。

D=デュアルモーターによる4WD化でフロントのラゲッジスペースが半分削られたとしても、テスラに乗るならこれしかない、と思えるP85Dのトータルパフォーマンスは素晴らしい。

車輌の安全デバイス他電装品は順次アップデートされるところも、電子製品らしい対応で楽しいではないか。

桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマーティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年の今年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。

《桂伸一》

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